2006 年 16 巻 1 号 p. 55-71
本邦の医療安全対策において,インシデント・アクシデントレポートシステムは中心的な役割を果たしてきたが,いくつかの問題点が明らかになってきた。特にレポートを提出しても多くは有効な改善策を提示できないことが問題であり,このような事例が増加することによりシステムの信頼性が低下することが危惧される。また,このシステムは殆どの病院で導入されているが,医師からのレポートが一件もない病院が50%にのぼり,これらの病院では医療安全対策そのものが適切に実施されていない可能性がある。医療安全の推進にはインシデント・アクシデントレポートの問題点を理解の上,適切に活用することが必要である。