医療と社会
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特集論文
医療安全管理の現状と展望
京都大学医学部附属病院における医療安全管理の現状
廣瀬 昌博
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2006 年 16 巻 1 号 p. 33-53

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抄録
 わが国の医療安全活動は,1999年1月横浜市立大学病院で発生した医療事故を契機に始まったと考えてよい。一方,米国では1999年11月に米国医学研究所から「IOMレポート」として医療安全に対する方策が発表された。この1999年は,医療安全に関与する者にとって印象深い年である。わが国でもIOMレポートがわが国の医療安全の牽引力となったことは事実であるが,それよりも同年の大学病院における医療事故によって医療安全の活動が大きく前進したのである。
 1999年1月の医療事故の後,2001年国立大学附属病院長会議から「医療事故防止のための安全管理体制の確立に向けて」(提言)が公表され,“医療事故防止委員会の設置”,“専任のリスクマネジャーの配置”,“インシデントレポート報告体制の採用”などが提言された。また,国立大学附属病院安全管理協議会が国立大学医学部附属病院における医療安全に関する事項について検討する場として,2002年度よりその活動が開始された。
 一方,厚生労働省は,2002年10月すべての病院および有床診療所の管理者に対し,医療に係る安全管理のための“指針の整備”,“委員会の開催”,“職員研修の実施”,“インシデントレポートの採用”などの医療安全体制の確保を義務付けた。さらに,翌年4月,同省は特定機能病院や臨床研修病院に対し,“医療に係る安全管理を行う者の配置と部門の設置”,および“患者相談窓口の設置”などを義務付けた。
 京都大学医学部附属病院では,2000年2月末に医療事故が発生し,医療安全活動が開始された。それは“医療事故防止委員会の設置”,“総括リスクマネジャーの任命”,“インシデントレポート制度の採用”などであった。さらに,2年後の2002年4月には専任医師によるリスクマネジャーが任命されるとともに病院長直轄の安全管理室が誕生した。
 本稿では,わが国の医療安全に関する活動について概観するとともに、京大病院において、とくに安全管理室の設置された2002年4月から2005年3月までの医療安全に関する活動を,日常的な事項と医療事故発生時について述べる。
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© 2006 公益財団法人 医療科学研究所
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