日本呼吸器外科学会雑誌 呼吸器外科
Online ISSN : 1884-1724
Print ISSN : 0917-4141
ISSN-L : 0917-4141
人工赤血球(リポソーム包埋ヘム)の酸素運搬能に関する検討(シンポジウムII 臨床応用を目指した基礎的研究)
小林 紘一渡辺 真純橋詰 寿律川村 雅文加藤 良一菊池 功次石原 恒夫福澄 正規西出 宏之土田 英俊
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 4 巻 6 号 p. 676-680

詳細
抄録

酸素運搬機能を持つヘムを合成し,これをリポソームに包理することにより全合成系の酸素運搬体リポソーム包埋ヘムを作製し,本物質の生体内における酸素運搬能の検討を行った.4頭の犬より脱血した後,リポソームヘム液を静脈内に投与した.リポソームヘム1mM・心拍出量1リットル当たりの1分間における酸素運搬量は6.5mlから9.4mlであった.全酸素運搬量のうちリポソームヘムが運搬した酸素は4.0%から19.0%で,リポソームヘムからの酸素消費量は10.9%から36.1%であった.このようにこのリポソームヘムは肺で酸素を結合し,組織で酸素を放出しており,酸素運搬体としての基本的条件を満たしていることが判明した.未だ実験段階ではあるがこのリポソームヘムは全合成系であるので輸血を介しての感染症を予防することができるばかりでなく,赤血球の膜抗原を含まないので使用に際し血液型の判定や交叉試験の必要がないという利点がある.

著者関連情報
© 1990 日本呼吸器外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top