2008 年 61 巻 6 号 p. 333-338
大腸癌は高齢になると女性の比率が増加し,女性では右側癌の比率が多い現象の分析を試みた.内視鏡検査を受けた大腸腫瘍患者1,004例(腺腫のみ598例,1個以上の粘膜内癌185例,1個以上の浸潤癌221例)を男性638例(M群)と女性366例(F群)に分類した.平均年齢は腺腫群がM群63.3歳,F群67.6歳,粘膜内癌群はM群66.2歳,F群70.1歳,浸潤癌群はM群68.5歳,F群71.8歳であり,いずれもF群が高齢だった(p<0.05).腺腫: 粘膜内癌: 浸潤癌の比率はM群 60.7%:19.4%:19.9%,F群 57.6%:16.7%:25.7%であり,F群はM群より浸潤癌のみ高率だった(p<0.05).近位腫瘍と遠位腫瘍の比率はM群は腺腫48.3%vs 51.7%,粘膜内癌37.0%vs 62.9%,浸潤癌29.1%vs 70.9%であり,腫瘍が進行するほど遠位側移動した(p<0.005).F群は腺腫48.8%vs 51.2%,粘膜内癌41.0%vs 59.0%,浸潤癌43.6%vs 56.4%であり,遠位側移動はなかった.以上から女性は男性より高齢で近位側の浸潤癌を発症しやすいと考えられる.