2010 年 63 巻 10 号 p. 855-862
2010年4月に本邦のクローン病診療ガイドラインが公表された.潰瘍性大腸炎のガイドラインと同様にエビデンスとコンセンサスが統合された内容となっている.クローン病はいぜんとして原因不明の難治性疾患ではあるが,今日,病態に即した治療が普及してきている.インフリキシマブに代表される抗サイトカイン療法は従来治療に抵抗性の難治性患者にも高い有効性を示している.新規治療薬も開発されており,今後も治療の選択肢は広がることが予想される.したがって,適切な治療を正しく選択することが今まで以上に重要となる.本稿では,クローン病診療ガイドラインにおける治療の項を中心にその内容と活用法について概説した.クローン病診療ガイドラインはクローン病の診断,治療にあたって役に立つツールになり得るが,あくまで一般論として臨床現場の意思決定を支援するものであることを理解し活用すべきである.