日本大腸肛門病学会雑誌
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切除範囲の決定に血管造影が有用であったS状結腸癌による閉塞性大腸炎の1例
鬼束 惇義山田 直樹荒川 博徳安田 博之永島 寿彦嘉村 正徳今井 龍幸池田 庸子下川 邦泰
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1992 年 45 巻 1 号 p. 83-88

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抄録

結腸癌に伴う閉塞性大腸炎の手術に際しては,結腸癌の根治手術のみならず閉塞性大腸炎の病変部を完全に切除することが重要である.閉塞性大腸炎は術前診断のついたものが少ないこともあり,血管造影像について検討した報告はない.われわれは術前に血管造影を施行し,閉塞性大腸炎の範囲を判定するうえで有用であった症例を経験したので報告する.症例は68歳の女性で左下腹部痛,嘔吐,下痢を主訴とし来院した.注腸造影にてapple coreとその口側の母指圧痕像,鋸歯状の壁を認めたため,S状結腸癌とそれに伴う閉塞性大腸炎と診断した.下腸間膜動脈造影にて,結腸脾轡曲部以下の下行結腸に,腸壁の濃染像,vasa rectaのtaperingの消失,transit timeの短縮が認められた.これらの所見は腫瘍と閉塞性大腸炎の問の僅かな部分には認められなかった.動脈造影より術前に結腸の切除範囲を脾轡曲部と定め,病変部を完全に切除することができた.

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