日本計算工学会論文集
Online ISSN : 1347-8826
ISSN-L : 1344-9443
漸化式によるVortex-in-Cell法の渦要素-格子補間の高速化とその誤差評価
出川 智啓
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2015 年 2015 巻 p. 20150003

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抄録

本研究では, Vortex-in-Cell法(以下, VIC法)の渦要素-格子補間を高速化する一手法を提示する. VIC法では, 流れ場の渦度を渦要素により離散化し, 移流速度は空間を分割する格子上で流れ関数のPoisson方程式を解いて計算する. 流れ関数のPoisson方程式の求解にはこれまでに提案されている高速な手法を適用できるが, Poisson方程式の求解が高速化するにつれて, 渦度を計算格子へ配分する渦要素-格子補間の負荷が増大する. 渦要素-格子補間は並列化が困難であり, これが大規模計算へのVIC法の適用を妨げている.
渦要素がもつ渦度を格子に配分する関数(以下, 分布関数)にはガウス分布が多用されるが, ガウス分布の計算に用いられるexp()は計算負荷が高く, exp()の計算自体を高速化することでも渦要素-格子補間を高速化できる. Turkowskiは, 画像処理のガウスぼかしフィルタ処理に用いる係数テーブルを高速に生成する方法として, 差分商を用いることを提案している. ぼかしフィルタの係数テーブルを作成する際, テーブルの全要素に対してガウス分布を計算するのではなく, テーブルの中心でガウス分布の値を計算し, 既に計算されたテーブルの要素に変化率をかけることで近傍要素の値を計算する. すなわち, ガウス分布を漸化式で表現する.
このガウス分布の漸化式表現を, VIC法の渦要素-格子補間に適用する. 渦要素が誘起する渦度を計算格子に配分する際, すべての格子点で渦度の分布関数を計算するのではなく, 基準となる点から計算を開始し, 既に計算された関数値に変化率をかけることで隣接点での値を計算する方法である. 漸化式表現を導入したVIC法を平面混合層の計算に適用し, 混入する誤差や計算時間の変化を調査し, その有用性を明らかにした.

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© 2015 The Japan Society For Computational Engineering and Science
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