日本計算工学会論文集
Online ISSN : 1347-8826
ISSN-L : 1344-9443
2015 巻
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 寺田 賢二郎, 平山 紀夫, 山本 晃司, 松原 成志朗
    2015 年 2015 巻 p. 20150001
    発行日: 2015/01/23
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    今日のCAEにおける, このような均質化法に基づくマルチスケール解析手法の優位性は, 3次元的かつ周期的に分布する微視的非均質性を有する固体を対象とした理論が完備されていることを背景としている. しかし, 周期的な微視的非均質性が面的な広がりしか持たない構造物について, ミクロは3次元固体, マクロは2次元の板・シェル構造でモデル化するための理論は, 未だ有効でかつ実用的なマルチスケール解析手法を提供するには至っていない. 実際, 均質化法の数学理論は, 空間的に周期変動する係数を有する微分方程式の解の漸近挙動を記述するものであり, これを面内に周期的な非均質性を有する板(本研究では, 複合板と呼ぶ)に直接的に適用すると, その単位構造(ユニットセル)の代表寸法が無限小になるような極限を取ることになり, マクロ構造は(面外せん断変形を考慮しない)薄板理論の式しか導かれない. 複合板のミクロスケールには3次元固体の力学挙動を考慮し, マクロには面外せん断変形を許容する厚板理論を採用することは, 板の厚さをゼロに漸近させる数学的操作が適用できないことを意味し, 面内非均質性の周期単位についても実寸法を保持しなければならないことになる.
    そこで本研究では, 数学的均質化法のように解の漸近展開形から出発した式展開や, 板厚や面内周期性の代表寸法をゼロに近づけるなどの数学的処理は行わず, ユニットセルを``数値供試体''とみたてて3次元固体としてモデル化し, 等価な均質体の板剛性を算出できるような変位場とその境界条件式を提示する. そして, この変位場から導出され, 平衡状態にあるユニットセル内で分布するミクロひずみや応力と, 厚板としてモデル化されたマクロ板構造の一般化合応力とひずみ・曲率とを, 力学的に整合性を保つように関係づけたうえで, 非均質な材料分布を有するユニットセルのミクロ境界値問題と, 等価な厚板のマクロ境界値問題を個別に設定し, マルチスケール境界値問題を定義する. このうち, ミクロ境界値問題を解くことでマクロ板剛性を算定することを一般に均質化解析と呼ぶが, 本研究ではこれを「数値平板試験」と呼び, FEMによる具体的な方法を提示する.
    数値計算例では, 均質な板と積層板について, 提案手法で求めた板剛性と理論解とを比較して手法の妥当性を確認した後に, 面内に周期的な非均質を有する複合板に対して, マルチスケール解析(数値平板試験=均質化解析, マクロ解析, 局所化解析)を行い, 手法の有用性を例示する.
  • 古口 睦士, 矢地 謙太郎, 山田 崇恭, 泉井 一浩, 西脇 眞二
    2015 年 2015 巻 p. 20150002
    発行日: 2015/01/30
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    構造最適化は, 数値解析による性能評価と数学的な最適化手法により, 最大限の性能を有する構造を求める手法で, 寸法最適化, 形状最適化, トポロジー最適化に大別される. このうちトポロジー最適化は, 構造の形状だけなく形態の変更も可能な最も自由度の高い手法で, 大幅な性能向上が期待できる. 構造最適化は, 当初構造問題への適用に限られていたが, 近年では様々な物理問題に適用されてきている. 流体問題への適用は, 電磁波問題などと比較するとやや古く, ストークス流を対象に流体に作用する抗力の最小化を目的とし, その形状感度を導出することにより最適形状を得る手法や, 変動拘束された境界を含む領域において粘性流体を対象とした散逸エネルギー最小化の構造最適化の手法が提案されている. しかしながら, これらの手法は, 対象とする設計領域における物体と流体の境界を変動させることにより最適構造を得る, いわゆる形状最適化の手法であるため大幅な性能向上が期待できないうえ, 最適構造が初期構造に強く依存する欠点を持つ.
    これに対して, 流体問題へのトポロジー最適化の展開も報告されている. その報告の例としては, 設計領域全体を多孔質体と仮定し, 物体領域と流体領域の境界で流速が零になるように仮想的な外力を与えることで物体と流体を区別し, 散逸エネルギーを最小化する最適構造を得る手法が挙げられる.
    トポロジー最適化の基本的な考え方は, 固定設計領域を導入し, 物体の有無を示す特性関数により構造最適化の問題を材料分布問題に置き換えることである. このため, 構造の形状だけでなく形態の変化も可能となるが, 特性関数が設計領域内のいたるところで無限小の範囲で不連続になる可能性を持つ不適切な問題(ill-posed problem)となる. この問題を解決するためには, 大域的な意味において不連続な関数を連続な関数に置き換える設計変数の緩和を行う. この緩和方法には, 均質化法や密度法などが提案されているが, どちらの手法においても, 最適構造の境界が明確にならない, いわゆるグレースケールを許容する欠点を持つ.
    他方, 新たな構造最適化の手法として, レベルセット法に基づく形状最適化が提案されている. この手法では, レベルセット関数と呼ばれるスカラー関数を用いて, 設計領域中の物体の有無をその符号で示し, 零等位面を境界として表現するため, グレースケールを含まない明瞭な境界を有した最適構造が得られる利点がある. しかしながら, この方法は基本的には形状最適化の考え方に基づいており, 新たに境界が生成されるような構造の形態の変化を許容しない. この問題を本質的に解決する手法として, レベルセット法による境界表現を行いながら, トポロジー導関数の考え方に基づき設計変数を更新することにより, 形態変更を可能とした新しいトポロジー最適化の手法が提案されている.
    そこで本研究ではこの形態変更を可能とした新しい最適化の手法に基づき, ナビエ・ストークス方程式を支配方程式とする内部流れにおいて, エネルギー損失の最小化を目的としたトポロジー最適化の手法を構築する. トポロジー最適化は, 状態場および感度解析のための随伴場の計算に, 何らかの数値解析法を必要とする. その代表的な数値解析法として有限体積法が挙げられる. 有限体積法は, 離散化した各要素内において保存則を満たすように定式化した数値解析手法で, 状態方程式に存在する対流項や拡散項をガウスの積分定理により領域積分から境界積分に変換でき, 数値積分においても中点公式を用いる. また, 非構造格子を扱える汎用性の高さという利点もあり, 流れ場の数値解析法として広く利用されている. そこで本研究では, 状態場と感度解析には有限体積法を用いた新しい方法を開発することにより, 明確な形状表現を可能にしながら大規模問題への展開可能な方法論を構築する. 随伴方程式は連続系に基づき導出し, 有限体積法により離散化して数値安定性に優れている半陰解法のSIMPLE法(Semi-Implicit Method for Pressure Linked Equation) を用いて解析している. また, 最適化の過程におけるレベルセット関数を更新には, 時間発展方程式の数値解析法として有限体積法を適用した方法を構築する. これにより, 時間発展方程式の離散化の過程で弱形式による複雑な展開は必要としないうえ, 時間項については数値安定性のよいオイラー陰解法を適用することにより, 時間発展方程式の計算効率は状態場および随伴場と同様に向上させることができる.
  • 出川 智啓
    2015 年 2015 巻 p. 20150003
    発行日: 2015/02/03
    公開日: 2015/02/03
    ジャーナル フリー
    本研究では, Vortex-in-Cell法(以下, VIC法)の渦要素-格子補間を高速化する一手法を提示する. VIC法では, 流れ場の渦度を渦要素により離散化し, 移流速度は空間を分割する格子上で流れ関数のPoisson方程式を解いて計算する. 流れ関数のPoisson方程式の求解にはこれまでに提案されている高速な手法を適用できるが, Poisson方程式の求解が高速化するにつれて, 渦度を計算格子へ配分する渦要素-格子補間の負荷が増大する. 渦要素-格子補間は並列化が困難であり, これが大規模計算へのVIC法の適用を妨げている.
    渦要素がもつ渦度を格子に配分する関数(以下, 分布関数)にはガウス分布が多用されるが, ガウス分布の計算に用いられるexp()は計算負荷が高く, exp()の計算自体を高速化することでも渦要素-格子補間を高速化できる. Turkowskiは, 画像処理のガウスぼかしフィルタ処理に用いる係数テーブルを高速に生成する方法として, 差分商を用いることを提案している. ぼかしフィルタの係数テーブルを作成する際, テーブルの全要素に対してガウス分布を計算するのではなく, テーブルの中心でガウス分布の値を計算し, 既に計算されたテーブルの要素に変化率をかけることで近傍要素の値を計算する. すなわち, ガウス分布を漸化式で表現する.
    このガウス分布の漸化式表現を, VIC法の渦要素-格子補間に適用する. 渦要素が誘起する渦度を計算格子に配分する際, すべての格子点で渦度の分布関数を計算するのではなく, 基準となる点から計算を開始し, 既に計算された関数値に変化率をかけることで隣接点での値を計算する方法である. 漸化式表現を導入したVIC法を平面混合層の計算に適用し, 混入する誤差や計算時間の変化を調査し, その有用性を明らかにした.
  • 山本 剛大, 山田 貴博, 松井 和己
    2015 年 2015 巻 p. 20150004
    発行日: 2015/04/16
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    金型を用いた板曲げ加工はものづくりにおいて広く用いられている. 近年, 製造プロセスの金型設計に要する時間や費用を大幅に削減したいという要望が非常に強くなり, 設計段階における数値解析技術に対する要求精度が高くなっている. 板成形に適用される数値解析技術として, 有限要素法を用いた板成形シミュレーションが挙げられる. 板成形シミュレーションに用いられるシェル要素などの構造要素には, 曲げ部分での板厚変化や金型からの反力の予測に問題がある. 構造要素は解析対象として薄板を想定しており, 板厚方向に平面応力状態を仮定している. そのため, 板厚が異なる箇所において同程度のひずみが生じる場合, 板厚が厚いほど変形量が大きくなるので, 厚板に対する解析は重要である. 厚板の挙動をより正確に把握するには連続体要素の使用が推奨されているが, メッシュ分割などのプリプロセスや計算時間を含む, 数値解析全体の計算コストが高くなることから, 厚板の数値解析に適用できる構造要素の開発に対する需要が高まっている.
    板厚方向の挙動を把握するための様々なシェル要素が提案されているが, 板成形シミュレーションにおいて構造要素の計算コストが抑えられるという利点を損なうことなく, 構造要素のみで完結する数値解析手法の提案は見当たらない. そこで本研究では, 構造解析に広く用いられる, 双一次補間とひずみ仮定法にもとづく4節点シェル要素であるMITC4シェル要素に板厚方向の変形を表す変動量を導入することで, 板成形で生じる表面力を外力として扱うことができ, その外力により面外方向に分布する応力状態を表現できるシェル要素を開発する. 本研究で提案するシェル要素では, 板厚変化を表現する自由度を要素ごとに独立として定義しているため, 剛性行列を組み立てる際に縮約操作が行える. そのため, 解くべき連立方程式の未知数の数は, MITC4シェル要素などの一般的なシェル要素と同等である.
    本研究では, 要素内で板厚を一定と仮定し, 板厚を評価するサンプリング点を定義する. サンプリング点において定義した板厚方向ベクトルに沿って, 面外節点を導入する. ここで, 面外節点は板厚方向の変位成分のみを持つ節点として, 面内節点とは独立に定義する. 導入した面外節点の変動量を従来のシェル要素の定式化に組み込むことで, 板厚変化を考慮した変位場を表現できる. ひずみ場は変位場の微分をとることで直接算出できるため, 面外垂直ひずみが面外節点の変動量を用いて表現される. したがって, 提案するシェル要素では, 通常のシェル要素に課される平面応力の仮定を用いることなく, 面外節点の変動量から面外垂直ひずみを算出する. 一方, 面外せん断ひずみに関しては, 通常のシェル要素と同様に要素内で一定となる.
    提案するシェル要素は表面に面外節点が配置されるため, 面外節点の仮想変動量を用いて面外方向の仮想仕事式が定義できる. 表面での板厚方向の変動量が要素内で一定として扱えるため, 面外節点の仮想変動量と仕事共役な外力は表面にかかる荷重の平均値となる. 面外方向の仮想仕事式から, 提案するシェル要素では表面に作用する外力を表面上で評価できる. 一方, 面外方向に外力が作用しない場合, 提案するシェル要素では平面応力状態を表面に対する境界条件として与えることになる. したがって, 通常のシェル要素では面外方向に平面応力を仮定し, 縮退した構成則が用いられるが, 提案するシェル要素では面外方向に仮定を設けないため, 構成則は連続体要素と同様の3次元構成則が適用できる.
    本論文では, 板厚変化を表現するための面外節点を導入し, 板厚方向の変形を考慮するシェル要素を開発した. 本シェル要素では面外方向のつりあい方程式を評価するために, 要素内で面内節点とは独立に面外節点を導入した. 板厚が厚くなるほど, 表面力を中央面で評価する従来のシェル要素に対する適用限界が顕著となる一方, 本シェル要素では連続体要素と同等の数値計算結果が得られることを示した. また, 有限変形に対する検証を通して, 本シェル要素が従来のシェル要素の定式化と共通する部分で, ソリッド要素との結果にずれが生じることを確認した. シェル要素に特有な変形の幾何学的表現に対する制約を把握した上で, 本シェル要素の適用範囲を設定する必要がある.
  • 坂 敏秀, 緒方 誠二郎, 小磯 利博, 岩本 賢治
    2015 年 2015 巻 p. 20150005
    発行日: 2015/04/21
    公開日: 2015/04/21
    ジャーナル フリー
    本論文では, 地中に埋め込まれた基礎の振動応答を得るために, 薄層要素法と有限要素法で構成されるハイブリッド法の新しい計算アルゴリズムを提案する. 改変された連立方程式を効率よく解くことが可能な修正変位法を, 従来のハイブリッド法に導入することで, 明示的な地盤剛性行列を得るために必要な, 自由地盤柔性行列の逆行列計算を回避する. この逆行列計算が従来法の計算量に対して支配的であるため, 逆行列計算を回避した提案法は劇的に計算時間を短縮できる可能性がある. 結論として, 提案法の計算量は従来法のそれ以下であり, 両者の比は, 全体系の自由度数に対する埋め込み基礎と地中構造物の自由度数の比の3乗に比例する. また, 提案法の計算精度と計算効率をいくつかの数値解析例を通じて検証している.
  • 白山 晋, 越前谷 直之
    2015 年 2015 巻 p. 20150006
    発行日: 2015/05/08
    公開日: 2015/05/08
    ジャーナル フリー
    In this study, based on complex network science, we propose a new method to determine the location of the distributed generators such that the efficiency and the fault tolerance of the power grid can be improved. In the case of using only network-topology data, the numerical experiments show that the arrangement of the distributed generators which increases the fault tolerance produces some location deviation. It is found that this result can be explained by the lowest capacity allocated to a link, and increasing the lowest value of the capacity enables more efficient arrangement of the distributed generators without reducing the fault tolerance. In the case of using the network data which have some properties of a real power grid, we find a new explanation variable to analyze the power loss of the power grid evaluated by an exact formula used in the field of electrical engineering.
  • 油橋 信宏, 松田 一郎, 越塚 誠一
    2015 年 2015 巻 p. 20150007
    発行日: 2015/06/23
    公開日: 2015/06/23
    ジャーナル フリー
    ラグランジュメッシュフリー法として、MPS法は広く工学用途において有用であることが示されており、特にMPS法は自由表面と多相流解析のために使用されている。本研究では、カムシャフトを回転させたときの流体の撹拌抵抗をMPS法により計算し、オイルの攪拌の様子とトルク値について実験結果と比較した。その結果、オイルの挙動ととトルク値の計算結果は、各回転数において実験結果とよく一致した。さらに、計算結果の信頼性についてはGCI(格子収束指数)法により推定した。
  • 井ノ本 健, 松野 謙一, 山川 勝史
    2015 年 2015 巻 p. 20150008
    発行日: 2015/06/24
    公開日: 2015/06/24
    ジャーナル フリー
    In this paper, a finite-volume method on a moving unstructured computational grid for simulation of incompressible flows is presented and developed. In order to strictly assure both physical and geometric conservation laws, the unstructured moving-grid finite-volume method is constructed based on four-dimensional control volume in which space and time are unified. In the method, the velocity and the pressure are connected through a fractional step approach in four-dimensional control volume. We show the detailed formulation of the method and that the method works effectively for numerical simulations of flows including moving boundary. Furthermore, the method is applied for coupled simulation of fluid and motion dynamics. The motion equation with six degrees of freedom is solved in a coupled manner together with the fluid Navier-Stokes equations. Hukidama, which is a japanese toy that has been around since long ago, is lifted up in a jet stream while swinging. The motion of Hukidama is demonstrated and it is shown that the method works effectively for coupled simulation of fluid and motion dynamics.
  • 大石 篤哉
    2015 年 2015 巻 p. 20150009
    発行日: 2015/08/24
    公開日: 2015/08/24
    ジャーナル フリー
    Isogeometric解析は, CADで形状定義に用いられるNURBSを解析の基底関数として用いる新しい解析法である. 形状定義と解析に同一の基底関数を用いているため, 従来の有限要素解析において実用上最大の難点となる要素分割が不要になり, CADとCAEがスムーズに接続されるという大きな利点を有している. しかしながら, Isogeometric解析の基底関数であるNURBSは従来の有限要素解析で用いられる基底関数よりも複雑であることや, 有限要素解析の節点に相当する制御点が必ずしも解析対象の内部および表面に存在するとは限らないという相違点などは, Isogeometric解析を理解する際の障害となることがある.
    近年, スマートフォンやタブレットなどの携帯端末が急速に普及し, また, ハードウエア性能の向上とともに様々な新しい用途にも使われるようになりつつあり, 時間や場所に限定されないモバイルコンピューティング, ユビキタスコンピューティングを実現するキーデバイスである.
    本研究では, 携帯端末上で動作するCAEシステムを開発し, その性能を評価した. 現状では絶対性能においてPCに劣る携帯端末を用いるため, 演算・描画における高速性を追求するのではなく, 携帯端末の特性を生かしたアクセスの容易さ, ユビキタス性に重点を置いたシステムを目標とする. 具体的には, Isogeometric解析を対象とし, NURBS基底関数のグラフィカル表示機能, 形状や解析結果の3次元表示機能, 並列処理に対応した解析機能を有するIsogeometric解析学習支援システムを携帯端末上に実装した. 各機能は, 携帯端末の有するユビキタス性を活用するために, 別途サーバーを必要としないスタンドアローン型のアプリケーションとして開発した. ハードウエアの描画・演算性能が使いやすさと直結する3次元表示機能, 解析機能については, 本システムの学習支援システムとしての実用性および, 対応可能な表示・解析規模を明らかにするためにその描画・演算性能を評価した.
  • (第1報, 静的引張試験におけるひずみ計測)
    豊吉 巧也, 和田 義孝, 古川 知成
    2015 年 2015 巻 p. 20150010
    発行日: 2015/09/08
    公開日: 2015/09/08
    ジャーナル フリー
    本論文は, 全視野ひずみ計測における分解能について議論したものである. ひずみ測定において, ひずみゲージが現在でも一般的に工学の分野で使用されている. その理由は, 局所的な測定に適している点と, 高い精度ならびに分解能で測定が可能であるからである. しかしながらひずみゲージによる測定は, 広範囲に及ぶ測定や大変形問題では, 多大な労力を要する. このような場合には, 非接触でありかつ広範囲での測定が可能である全視野測定手法が有効である. 近年では, DIC法をはじめとする画像を使用した全視野測定手法が多くの測定で使用されている. それに加えて, 価格の低下と計算機の処理性能の向上により, 今後さらに用途の幅を広げ, 多くの測定に使用される技術であることが予想される. そのため, 測定における安定性と高い精度での測定の再現性は, 測定技術の向上には必要不可欠である. また, 数値計算におけるV&V (verification and validation) の観点から, 測定における不確かさの議論も欠かすことはできない. 全視野ひずみ測定における誤差の要因は, シャッター構造や機械的振動, 照明によるフリッカーノイズなどであり, これらを解決する必要があり, 金属材料などのひずみ測定において, 約0.1%のひずみ場の測定を満足する必要がある. 高い信頼性や高精度な測定のためには, サブピクセル単位での測定, 分解能, 測定の誤差範囲に関する知見が要求される.
    本論文では, ひずみ測定における測定分解能の定義と高精度化を可能とした Integrated Dot Centroid Tracking Method を提案する. 提案手法は, 全視野ひずみ測定における要求を満足する可能性と, ドットを貼り付けるのみでよいという簡便性と高い再現性, 単純な画像処理によって構成されているという3つの利点を有する. 単純な画像処理のみとすることで, 短時間で複数枚の画像の処理を可能とし, 統計的な処理を可能となる. 特に統計的な処理が可能となることは, 撮影によって得られたドットの重心位置の分布から, 測定の不確かさならびに測定の分解能を議論することが可能となる. ひずみ測定の分解能はこの評価により決定され, 測定結果とシミュレーションによる計算結果との定量的評価と誤差要因の特定が期待できる. 本論文において, 撮影枚数, ドットサイズ, ドット間距離が測定分解能の決定要因であると仮定し, 提案手法のひずみ測定における測定の分解能について検討した. テストパターンの撮影により得られた, 大きさの異なるドットの重心位置の標準偏差から関係性を見いだし, 補間によって得られた標準偏差から, ひずみ測定の分解能を推測する手法を開発した. 推定された重心の標準偏差とひずみ測定の分解能について, 単純な引張試験によって, 提案手法を用いて検討した. 最後に, 提案手法により測定されたひずみ場について, ひずみゲージによる測定値, ひずみエネルギーによる評価, 有限要素法による解析結果との比較により, 測定精度について検証した. その結果, ドットの重心位置の標準偏差は, 提案した手法により予測を可能とし, 全視野ひずみ測定における誤差要因について特定することを可能とした. これらの結果から, 数値計算におけるV&Vで重要とされる測定の不確かさについての議論ならびに, 実験値のシミュレーション結果の比較を, 提案手法と分解能の定義により示した.
  • 車谷 麻緒, 川瀬 晴香
    2015 年 2015 巻 p. 20150011
    発行日: 2015/09/11
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    材料内部のイメージデータから, 直接的に有限要素モデルを作成する方法として, ボクセル有限要素法(イメージベース有限要素法)が代表的である. しかし, この方法は, 細かいボクセルメッシュで幾何形状を表すことから, 材料界面において不要な応力集中や応力振動が生じることに加えて, 計算の負荷や容量が増大するといった問題がある.
    本論文では, ボクセルメッシュとエンリッチメントを応用して, コンクリートのような非常に複雑な非均質材料を精度よく解析するための「拡張ボクセル有限要素法」を提案する. 具体的には, ボクセルデータを利用して, 材料界面の数と配置に応じたレベルセットを定義することにより, 任意の幾何形状の認識と積分, および適切な自由度の定義を容易に行える方法を示す. さらに, 材料界面のエンリッチメントを多重に行うことによって, 非常に複雑な非均質材料のモデル化と数値解析が行える方法を示す. 検証例題により, 多重エンリッチメントの必要性と妥当性を示した後, 数値解析例において, 従来のボクセル有限要素法で見られた応力振動や応力集中の問題を回避できることを例示する.
    第2節では, 拡張ボクセル有限要素法の定式化と, ボクセルデータを利用したレベルセットの定義, および多重エンリッチメントについて示す. 第3節では, 非均質材料に対する拡張ボクセル有限要素法の解析精度について検証する. 1次元の引張問題を例に, 多重エンリッチメントの必要性と妥当性を示した後, 多次元問題における解析精度を検証する. 第4節では, 非常に複雑な非均質材料を模擬したモデルに対して, 拡張ボクセル有限要素法を適用した際の数値解析例を示す. 第5節では, 本研究の総括と今後の展望を示す.
  • TianGang Zhang, Seiichi Koshizuka, Kazuya Shibata, Kohei Murotani, Eij ...
    2015 年 2015 巻 p. 20150012
    発行日: 2015/09/18
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    A wall boundary condition represented by polygons was presented by Harada et al.(31) based on the moving particle semi-implicit (MPS)(1) method to reduce the memory cost and calculation time for the wall particles. However, the inaccuracy of the wall weight function near a non-planar wall boundary causes the unphysical motion of the fluid. Therefore, this paper proposes an improved wall weight function for non-planar wall boundaries. Hydrostatic and dam break simulations with and without a wedge in a water tank are conducted to demonstrate the improvement.
  • 佐藤 雅弘, 中野 翼, 春木 孝之
    2015 年 2015 巻 p. 20150013
    発行日: 2015/10/07
    公開日: 2015/10/07
    ジャーナル フリー
    MPS法による, 2次元弾性表面波(レーリー波)解析を行い, その精度を数値実験した. 弾性波のMPS法による解析は, これまでもあるが, 弾性表面波の解析例はない. これは, 自由境界条件の精度の検討を兼ねている. 粒子を正方格子状に規則正しく置いた場合, レーリー波の位相速度は1%以下の精度で一致した. また, 粒子配置をランダムにした場合, ランダムの度合いが大きくなるとレーリー波の位相速度は遅くなった. その時, 影響半径が大きいほど, 位相速度の変化が小さいことが分かった. また, 正方格子から, 10%程度のランダムさであれば, レーリーは速度は, ±1%の範囲内であることが分かった. MPS法は, 破壊や砕波といった解析の難しい非線形現象の解析が可能である.
  • 加藤 準治, 谷地 大舜, 西澤 峻祐, 高瀬 慎介, 寺田 賢二郎, 京谷 孝史
    2015 年 2015 巻 p. 20150014
    発行日: 2015/11/06
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    本研究は, 超弾性複合材料のマルチスケール解析を基本としたミクロ構造トポロジー最適化手法を提案するものである. ここでは、所与の材料体積量一定のもとマクロ構造のエンドコンプライアンス最小化を目的関数とした問題設定をした.
    一般にマクロ構造挙動は材料微視構造であるミクロ構造の幾何学的特性に強く依存することが知られている. 逆に言えば, ミクロ構造の幾何学的特性を最適化することができれば, マクロ構造の力学的性能を最大化したり制御することが可能となりえる. この問題を解くためには, マルチスケール解析を導入して非線形構造問題を解いた上で, ミクロ構造の最適化手法を導入することとなるが, 数値的に非現実的な計算コストが必要となる. 本研究では, 分離型マルチスケール解析という計算コストを低く抑えることが可能な手法を導入し, これを実現するものである.
  • 二保 知也, 堀江 知義
    2015 年 2015 巻 p. 20150015
    発行日: 2015/11/06
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    変形, 流体, 電磁場などが相互に影響を及ぼす連成現象は, 研究・開発などの高度化・高精度化において重要になることが多く, 連成効果を考慮した連成有限要素解析は幅広い分野で必要とされている. この連成解析には流体・構造連成解析, 電磁場・構造連成解析などの2連成解析のほかにも, 構造・電流・熱伝導3連成解析などもあり, さらに, 連成解析アルゴリズムも一体型連成解析アルゴリズムや分離型連成解析アルゴリズムなどがあるため, 連成解析には多くの種類がある. 連成解析コードとしては, ユーザ開発の連成解析コードや連成解析機能を有する汎用解析コードのほかにも, 汎用解析コードのユーザ・サブルーチンを利用した連成解析コードや連成解析用のインターフェイスを利用した連成解析コードが開発されている. ユーザ開発の連成解析コードは開発コストや解析の信頼性の問題, 連成解析機能を持つ汎用解析コードは解析対象の連成問題に対応している必要があることやコードの変更が必要な最新理論は導入が困難である問題がある. また, 汎用解析コードのユーザ・サブルーチンにユーザ開発コードを組み込む方法では汎用解析コードとユーザ開発コードのデータの受け渡しがそのユーザ・サブルーチン内に制限されるため高度な連成解析アルゴリズムの利用が困難なことや並列解析を行うときにはユーザ開発コードも並列解析に対応させる必要があり, 連成効果に関するデータをファイルにより受け渡す方法ではデータ・ファイルの処理が複雑になることやファイルのI/O時間および同期に関する問題が生じる. 連成解析用のインターフェイスの利用ではこれらのインターフェイスが対応していない汎用解析コードもあり, また, 高度な連成解析アルゴリズムは実装が難しいと考えられる. 以上のように, これらの方法は利点と問題点が混在している状況であり, さらに, 拡張性や自由度の高い方法が必要であると考えられる.
    本研究では, ユーザ開発コードと汎用解析コードを汎用解析コードのユーザ・サブルーチンおよびMPIにより組み合わせる連成解析方式を提案する. 本方式を実装するために必要な解析コードの条件, MPIの条件, ユーザの開発環境の条件について述べるとともに, 本方式におけるMPI_COMM_SPAWNを利用した解析コードの起動方法, MPI環境の初期化方法, ユーザ・サブルーチンを利用したデータの通信方法, ユーザ開発コードと汎用解析コードの通信方法について述べる. また, この方式を実装するときの解析コードの起動方法の問題点, 通信方法の問題点, 並列解析の集団通信の問題点, 汎用解析コードの利用上の問題点とこれらの対応方法について述べる. さらに, 本方式により抵抗スポット溶接の弾塑性接触変形・電流・熱伝導3連成解析システムを, 弾塑性接触解析を行う汎用解析コードMSC. Marcと電流・熱伝導連成解析を行うユーザ開発コードを組み合わせて実装する. 本システムより抵抗スポット溶接解析を行い, ユーザ開発コードと汎用解析コードを組み合わせた3連成解析が実現されていることを確認する. さらに, この3連成解析に接触電気抵抗を求めるためのミクロスケール弾塑性接触・電流連成解析を組み合わせたマルチスケール連成解析システムを実装する. 本システムによりユーザ開発コードと汎用解析コードを利用したマルチスケール連成解析が実現されていることを確認するとともに, 本方式が拡張性・自由度が高いことを示す. また, これらの解析により, 本方式により汎用解析コードの利用による信頼性の高い連成解析, 汎用解析コードのみでは実現できない連成解析, MPIの利用による連成解析の自由度・拡張性の向上, コミュニケータの分離による並列解析の容易な利用が実現できることを確認する.
  • 井ノ本 健, 松野 謙一, 山川 勝史
    2015 年 2015 巻 p. 20150016
    発行日: 2015/12/08
    公開日: 2015/12/08
    ジャーナル フリー
    A thrown boomerang flies along an arch path and returns to the thrower. The flying motion is a complex motion caused by the gyroscopic precession which is the coupled phenomenon of air-flow and boomerang-motion. In this study, the flying motion of the boomerang was demonstrated using the numerical simulation and we showed influences of the figure of the boomerang on the flying motion of the boomerang. In the numerical simulation, we combined Moving-Grid Finite-Volume Method for fluid-flow solver, the Forward-Euler Finite-Difference Method for body-motion solver and the Quaternion for representation of body-rotation to solve the coupled phenomenon of air-flow and boomerang-motion. The moving-grid finite-volume method is constructed based on four-dimensional control volume in which space and time are unified and assures strictly both physical conservation laws and geometric conservation laws. The motion equation with six degrees of freedom was solved in a coupled manner together with the Navier-Stokes equations. Furthermore, the experiment was performed to validate the computational results and the computational results showed good agreement with the experimental results. In addition, it was shown that the angle of wing’s flap and the angle of incidence have great effect on the path of the boomerang.
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