日本臨床免疫学会会誌
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総説 特集:自己抗体の産生機序とその病原性
抗DNA抗体産生における小胞体ストレス応答性蛋白の役割
平林 泰彦
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2006 年 29 巻 2 号 p. 65-72

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抄録

  全身性エリテマトーデスに特徴的な抗DNA抗体はループス腎炎の病態形成に重要であるがその産生機序は不明である.DNA自体の免疫原性は低いが,あるペプチドをマウスに免疫すると抗DNA抗体が誘導される事より,抗DNA抗体産生を惹起する抗原はDNAと立体的相同性を有する非DNA抗原ではないかと推測した.そこで活動期ループス腎炎患者由来のモノクロナル抗DNA抗体O-81をプローブとして探索した結果,小胞体ストレス応答性蛋白Herpを得た.BALB/cマウスにHerpを免疫すると抗核抗体や抗DNA抗体が誘導された.また,SLE患者血清から精製した抗DNA抗体はHerpに結合した.もしHerpが抗原として認識されるのであれば,細胞ストレスが加わるたびに産生されたHerpがDNAとの立体的相同性を介して抗DNA抗体産生を誘導するかもしれない.EBウイルス形質転換細胞株ではHerpが強く発現しており,in vivoでHerpの産生が誘導される一つのモデルになると考えられた.さらにこの事はウイルス感染をはじめとする様々な細胞ストレスの反復が自己抗体産生を惹起する可能性をも示唆している.

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© 2006 日本臨床免疫学会
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