日本環境感染学会誌
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報告
比色法を用いた次亜塩素酸ナトリウム浸漬液塩素濃度測定の有用性と濃度変化に影響する因子
多賀 允俊薄田 大輔野田 洋子飯沼 由嗣西田 祥啓山本 康彦丹羽 修
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2016 年 31 巻 5 号 p. 314-318

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抄録

 次亜塩素酸ナトリウムは病院環境や物品の消毒薬として汎用されているが,分解されやすく,使用時に消毒効果が十分保証されているとは言い難い.ヨウ素試薬吸光光度法を測定原理とする塩素濃度測定の有用性を示した報告があるが,専用の測定器を必要とする.今回,特別な測定器を必要としない簡易な方法である比色法を原理とする測定試薬を用いて,病棟で調製された次亜塩素酸ナトリウム浸漬液の塩素濃度(実測値)を測定し,比色法による塩素濃度測定の有用性及び塩素濃度低下の要因について検討した.次亜塩素酸ナトリウム浸漬液を使用していない2病棟を除く19病棟の20サンプルを対象とした.調製方法から求めた塩素濃度(理論値)は120~750 ppmであり,17サンプルで理論値よりも実測値が低下していた.そのうち2サンプルは調製方法の誤りが要因であり,別の1サンプルでは調製前の次亜塩素酸ナトリウム製剤の塩素濃度低下が要因として考えられた.次亜塩素酸ナトリウムは,調製方法のみならず管理状況により,予想以上に分解が促進され消毒効果が不十分となる可能性がある.このため,次亜塩素酸浸漬液による消毒効果の保証のためには,次亜塩素酸ナトリウム溶液の適正な保管及び調製方法の遵守が必要である.比色法による測定試薬は安価かつ簡単に塩素濃度が確認でき,院内における適正な浸漬消毒の評価に有用であると考えられた.

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© 2016 一般社団法人 日本環境感染学会
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