2013 年 30 巻 1 号 p. 15-21
市販のブリーチーズ表面に認められた褐変の部位より2種類の希なカビHelicostylum pulchrumとScopulariopsis flavaを分離した.また腐敗酵母Debaryomyces hanseniiを同じ部位から分離した.H. pulchrumは好冷性カビの一種で10℃で良好な生育を示した.一方,同じ条件下でS. flavaは生育が非常に遅く,D. hanseniiは緩やかな生育を示した.汚染真菌と変色の関連性を調べるため,これらの菌種をチーズ片に接種した.赤,または黄の変色がD. hansenii単独か,D. hanseniiとH. pulchrum,D. hanseniiとS. flava,あるいは3菌種の混合接種によってチーズ片に認められた.変色は接種した菌種が産生する色素類ではなく,乳酸菌が原因であった.H. pulchrum,あるいはD. hanseniiで劣化したチーズに関して,ヒト神経芽細胞を用いた細胞毒性試験を行ったが,その抽出物は毒性を示さなかった.