老年歯科医学
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若年有歯顎者と高齢無歯顎者の粘膜性状と疼痛閾値の関係
小谷 祐子佐藤 裕二北川 昇下平 修竹内 沙和子磯部 明夫髙松 直也田中 里実原 聰
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2015 年 30 巻 2 号 p. 68-79

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抄録

本研究は,若年有歯顎者や高齢無歯顎者における口蓋粘膜の粘膜性状と疼痛閾値の関係を明らかにすることを目的とした。 被験者は,インフォームドコンセントが得られた口腔粘膜に異常を認めない,高齢無歯顎者 17 名とした。測定部位は上顎口蓋正中部,左側中間部,左側側方部の 3 カ所とした。超音波厚さ計の探触子で各部位を加圧(1 N/sec)し,被験者が主観的に疼痛を感知した時点で信号発生器のスイッチ押下を指示した。その時の超音波厚さ計の波形を記録し,ひずみゲージで求めた荷重量を同時に記録した。これらから,粘膜性状のパラメータを「厚さ」と「弾性率」,疼痛閾値のパラメータを「沈下量」,「圧力」,および「圧縮率」とした。17 名の若年有歯顎者と比較した。各部位の厚さと疼痛閾値の関係をマン・ホイットニーの U 検定およびスピアマンの順位相関係数を用いて測定した。 先行研究である,若年有歯顎者 17 名の結果と比較した。厚さは高齢無歯顎者の粘膜が厚く,弾性率,圧力,圧縮率は高齢無歯顎者のほうが小さかった。正中部と側方部の沈下量は高齢無歯顎者と同程度の大きさであった。厚さと沈下量においては,有意な相関は認められなかった。 これらの結果から,高齢無歯顎者の粘膜は厚く軟らかく,疼痛を生じやすいことから負担能力が低い可能性が示唆された。

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© 2015 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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