抄録
これまでわれわれは,粉末飼料飼育による咀嚼刺激の減少が,認知症の中核症状の 1 つである学習記憶能力の低下を早期に発症することを報告した。そこでわれわれは,粉末から固形飼料へと飼料性状を変更し,咀嚼刺激を回復することが,老化促進モデルマウス P8 の海馬に及ぼす影響を病理組織学的に検討した。 実験群は,5 カ月齢までと 7 カ月齢まで飼育する群とし,固形飼料のみで飼育する群,3 カ月齢にて粉末から固形飼料へと変更する群,5 カ月齢にて粉末から固形飼料へと変更する群,粉末飼料のみで飼育する群とした。飼育後,各マウスの脳切片を作製し,Nissl 染色を行った。その後,海馬の錐体細胞数と細胞面積を計測した。 学習記憶能力の低下前に粉末から固形飼料に飼料性状を変更し,咀嚼刺激を回復させることにより,海馬の錐体細胞数の減少を抑制する傾向が示唆された。 これにより,早期に咀嚼刺激を回復させることは,認知症の予防において重要であると考えられた。