2011 年 73 巻 4 号 p. 368-370
38歳,男性。父親が多発性内分泌腫瘍症1型。本人は2003年に受けた全身検索で非機能性膵腫瘍がみつかった。また翌年には脳下垂体腫瘍,副甲状腺機能亢進症がみつかった。多発性内分泌腫瘍症1型と診断され,各々の腫瘍に対して切除術を受けた。顔面人中の部位に数年前より小型の結節が出現し,徐々に増大してきたため,当科を受診した。診断と治療を兼ねて,全摘生検術を施行した。病理組織学的に真皮中層に拡張した血管と膠原線維の増加を認め,紡錘形の核をもつ線維芽細胞の増加もみられた。臨床所見と合わせて血管線維腫と診断した。多発性内分泌腫瘍症1型では,血管線維腫が生じることが多い。本症例では内分泌腫瘍がみつかり多発性内分泌腫瘍症1型と既に診断されていたが,血管線維腫の出現から多発性内分泌腫瘍症1型が明らかになる場合も少なくないと思われる。日常診療においてまれな疾患ではあるが多発性内分泌腫瘍症1型のデルマドロームの1つとして,血管線維腫に注意を払う必要があると考えた。