抄録
本論文は学校教育において,今日行なわれている彫刻教育がどのような過程を経て扱われるようになったのかを,昭和33年学習指導要領以前の動向を考察する事で明らかにしようと試みたものである。その際,次の三つの動きに着目して考察を進めた。(1)大正・昭和初期に数名の美術教育者が提唱した彫塑教育の重要性を訴える論と実践(2)石井鶴三による彫塑講習会の実践(3)成城小学校の彫塑教育の実践 その結果,当時の粘土細工を中心とした手工教育の中でも,今日の彫刻教育の内容に等しい実践が行なわれていた事が明らかとなった。当時から彫塑教育が,「テーマ性を持った立体的(三次元的)イメージの獲得と実現」を目指した点は,現代の彫刻教育にも通じるととらえる事が出来るだろう。