理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-551
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教育・管理系理学療法
内部障害系疾患に対する日常生活活動学実習についての検討
酒井 桂太藤野 文崇久利 彩子古井 透小枩 武陛岸本 眞藤平 保茂峰久 京子富樫 誠二
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抄録
【目的】日常生活活動(以下ADL)の授業において、四肢の変形、麻痺や欠損等に対する授業が主をしめている.一方、内部障害者に対するADLについては時間数の関係もあって、動作時の呼吸法や心拍数管理など座学による授業のみで、実際に実習する機会は少ない.今回、呼吸器疾患や心疾患などの内部障害に対してのADLの授業を担当する機会を得て、どのように授業を構築したらよいか検討し実施したところ若干の知見を得たので報告する.
【対象と方法】対象は本校第2学年学生68名(男性38名・女性30名)であり、結果を公表することについて説明をし、了解を得た.まず、呼吸器疾患および心疾患についての障害の特徴とそれに対するADLについて、座学にて90分間の授業を行った.次に、90分間の実習を次の項目に関して実際に体験してもらった.1)衣服着脱動作におけるズボンの着脱動作を床上、椅子座位、立位の各姿勢において、普通に呼吸したときと口すぼめ呼吸にて呼気時のみに動作することを各2分間繰り返して行う.2)本校の階段を1階から6階まで昇段する動作において、普通に呼吸したとき昇段することと口すぼめ呼吸にて呼気時のみに昇段する動作を行う.3)掃除動作において、四つ這い位で雑巾を使用して床を拭く動作と立位でモップを使用して床を拭く動作を各2分間行う.各動作間は十分な安静時間をとり、携帯用のパルスオキシメーターを使用し安静時の脈拍数とSpO2を計測し、動作の終了直後のそれぞれの値を記録した.学生には各動作にて計測された結果をもとにどうしてそのような結果になったか考察してもらった.
【結果】脈拍数とSpO2の全学生の前後の変化率の平均は以下の通りであった.1)衣服着脱動作時の通常呼吸と呼気時のみの動作の比較;脈拍;床上127.4%vs124.0%(p=0.092)、椅子座位129.4%vs123.1%(p<0.01)、立位130.5%vs126.4%(ns).SpO2;床上98.5%vs99.1%(ns)、椅子座位98.1%vs99.8%(p=0.096)、立位98.1%vs99.3%(p<0.05). 2)階段昇降の通常呼吸と呼気時のみの動作の比較;脈拍;170.1%vs152.7%(p<0.001).SpO2;99.6%vs99.1%(ns).3)掃除動作における雑巾とモップ時の比較;脈拍;132.0%vs131.2%(ns)、SpO2;98.8%vs99.2%(ns).学生個々の結果はさまざまとなり、その結果に対して呼吸方法や姿勢による影響以外の因子についても考察されていた.
【考察】今回、呼吸器疾患に対するADL上の呼吸方法や心疾患に対する上肢の等尺性収縮の影響などを考慮して実習内容を組み立てた.平均値や個々の結果は想定していた結果とは違った場合もあり、その原因について室温などの環境因子やADLに伴う移動動作や腹圧の影響などを考察できた学生が一部おり、今回の実習が内部障害者に対する影響因子について、実際の経験を通して幅広い考え方を必要することを気づく実習となったと考える.
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© 2009 日本理学療法士協会
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