抄録
本稿はWebサイト上に公開されている鑑賞教育指導案を可能な限り調査・収集し,批判的に考察しようとする。その際,鑑賞体験を形づくる鑑賞行為の四要因が,分析するための視点として設定される。この四契機こそ学習指導要領美術編(以下「要領」と略す)〔2・3学年〕B鑑賞(1)が鑑賞体験の本質に対する洞察と,それに基づく鑑賞能力観を形づくっているものに他ならない。それは近接学問分野にはない,美術教育独自の見識を示している。それぞれの類型における典型的な指導案例を対象として,各契機の有無と教育作用の様態を究明することによって,各類型に分別されるべき根拠を明確にした。事例ごとに教育的有効性を論評するとともに,契機が欠落することによって起因する問題点,及び改良すべき点を明らかにした。