抄録
筆者は学校美術教育の現象を考察して,その実質は現在性ではなく超越的な外部への志向が生成する過程であること,そして関連する六つの結論を得た。1.学校美術教育は現在的自己を保証すると同時に,超越性から生成される「無規定的過程」である。2.自分と隔絶した非対称的他者が,教育効果をもつことがある。3.美術作品は外部から贈与交換サイクルに与えられ,鑑賞教育もこのサイクルに児童生徒を参入する過程である。4.美術教育に関連する子どもの成長は,確固たる過程としての論理をもつ。5.自己外部の隔絶性への受容的姿勢は「視る」ではなく「聴く」比喩となる。