日本食品科学工学会大会講演要旨集
Online ISSN : 2759-3843
第71回 (2024)
会議情報

[2Mp] 食品物性
粘度制御によるCBSコンパウンドチョコレートのファットブルームの抑制
*佐藤 真帆小泉 晴比古路川 聡一大塚 沙耶上野 聡
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 163-

詳細
抄録

【目的】チョコレートに含まれる油脂であるココアバターは原料のカカオ豆の生産が不安定なため,市場への供給不足や高価格化が問題となっている.このため,安価で生産が安定な植物性油脂から作られるココアバター代替脂(CBS)の利用が進められている.しかし,CBSにおいてもβ’型からβ型への多形転移によるファットブルームが問題となっている.本研究室ではこれまでにCBSのファットブルームの問題に着目し,結晶化温度を高くすると結晶内の歪みが減少し,ファットブルームが抑制されることを明らかにしてきた.そこで本研究では,CBS融液の粘度に着目し,粘度と結晶内に蓄積する歪みの相関を明らかにすることを目的とした.

【方法】CBSとレシチンは東京フード(株)から提供されたものを用いた.本実験では,これまでのCBSと異なる組成のCBSを用いた.CBSとレシチンの添加量を変えたCBSを用意し,50 ˚Сから70 ˚Сの温度範囲で音叉振動式粘度計を用いて粘度を計測した.計測した温度と粘度を用いて活性化エネルギーを算出した.また,高エネルギー加速器研究機構のフォトンファクトリーで放射光X線回折測定を行い,得られた回折ピークから半値幅を算出し,歪みを定量化した.

【結果】CBSの結晶化温度の上昇と共に結晶内に蓄積された歪みは減少し,これまでと同様の傾向を観察することができた.また,CBSの粘度は温度の上昇と共に低下し,粘度が低下することで歪みも低下することが明らかとなった.一方、レシチン添加により粘度は低下し,活性化エネルギーが減少することで,歪みの量も減少することが観察された.また,0.5 wt%より多くレシチンを加えても粘度及び活性化エネルギーは変化しなかった.さらに,レシチン添加量が1 wt%を超えると結晶内に蓄積される歪みの増加が観察され,レシチンの最適な添加量が存在することも分かった.

著者関連情報
© 2024 公益社団法人 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top