主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第71回大会
回次: 71
開催地: 名城大学
開催日: 2024/08/29 - 2024/08/31
p. 228-
【目的】我々はこれまでに,粒径50μmのMPを用いて,ラットの糞に存在するMPの分析法を確立してきた.しかし,より微小なMPに対しての検討はできていない.本研究では,水酸化カリウム(KOH)溶液によるアルカリ処理を基準に,酵素液や過酸化水素(H₂O₂)での反応を付加することで,ラット組織(糞, 消化管, 肝臓, 腎臓, 脂肪)に存在する微小なMPについて,精度良く分析する方法を明らかにすることとした.
【方法】MPを含まない精製飼料にて飼育した9週齢のSD系ラット•雄性を解剖に供し,組織を採取後,-30℃にて保存した.後日,各組織を解凍•均一化し,糞および消化管は各40mg,肝臓,腎臓および脂肪は各700mgをそれぞれビーカーに採取した. PE製MP(粒径30μm)30-40個を正確に数えた後,上記ビーカーに添加した.10% KOH溶液で60℃,24時間の攪拌を行った後, 以下の検討を行った.
〈検討1:KOH〉ろ過によりメンブレンにMPを回収し,数えた.
〈検討2:KOH+酵素液〉静置後,上清に存在するMPはろ過によりメンブレン上に回収し,数えた.沈殿物中に存在するMPは,酵素液に移した後, 40℃,48時間反応させ,メンブレン上に回収し,数えた.
〈検討3:KOH+H₂O₂〉静置後,上清に存在するMPはろ過によりメンブレン上に回収し,数えた.沈殿物中に存在するMPは,30% H₂O₂溶液に移した後,60℃,48時間反応させ,メンブレン上に回収し,数えた.
【結果および考察】MPの回収率を算出した結果,KOH+酵素液はすべてのラット組織に対して,KOHと比べて高い回収率であった.一方, KOH+H₂O₂では,すべてのラット組織においてKOHと比べて低い回収率となり,その要因としてMPの色落ちが考えられた.これより,ラット組織における微小MP分析法には,KOH+酵素液が有効であることが示唆された.