主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第71回大会
回次: 71
開催地: 名城大学
開催日: 2024/08/29 - 2024/08/31
p. 234-
【目的】近年,コロナ禍により発酵食品ブームや健康志向の高まりで,糠漬けなどの発酵食品が幅広い世代から注目されている.糠漬けでは,乳酸菌による発酵過程において,抗高血圧因子であるγ-アミノ酪酸(GABA)の増加が報告されている.昨今,糠漬け野菜の様々な研究がなされているが,低温下での糠床の発酵熟成の過程における条件や機能性成分の研究は進んでいない.本研究では,メタボローム解析により低温発酵でも機能性を付与することのできる乳酸菌を用いた機能性糠漬けの開発を目的とした.
【方法】発酵食品由来のくろこ,糠床,すんき,3種類の分離源の乳酸菌を用いた.糠床500 gに水道水470 mL,食塩80 gを均一に混合し,乳酸菌スターター液30 mLを糠床に混ぜ合わせた.これを乳酸菌接種区とし,未接種区を自然発酵区とした.生試料にメタノール/クロロホルム/水の混合溶媒で抽出した試料を,HPLCおよびCE-MSを用いて,試料中の遊離アミノ酸,有機酸および糖分析を行った.上記で得られた試験結果について主成分分析を行った.
【結果】主成分解析の結果,発酵時間を軸とした成分の変動が見られ発酵時間毎に分類された.これは,発酵期間が長くなることで,乳酸菌の発酵の基質となるグルコースなどの糖類は減少していき,本来の成分とは異なる代謝物である機能性アミノ酸や酢酸や乳酸などの有機酸が増大していくことが示された.メタボローム解析の結果,本研究で供試した乳酸菌接種区は自然発酵区との差は小さく,類似した傾向を示すことも示唆された.また,γ-アミノ酪酸(GABA)およびアルギニンは発酵熟成と共に低下傾向が見られた.オルニチン,分岐鎖アミノ酸,グルタミン酸などの機能性成分は発酵開始13日後以降に増大傾向にあった.コリン系化合物であるベタインは発酵初期に増大し,アセチルコリンは発酵後期に増大した.