主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第71回大会
回次: 71
開催地: 名城大学
開催日: 2024/08/29 - 2024/08/31
p. 264-
【目的】サイクロデキストリン(以下CD)には,構成するグルコース数によってα-CD,β-CD,γ-CDのタイプが存在する.環状内部に食品成分を包接させることができるため,その食品成分の安定化や,苦渋味物質をマスキングさせる素材として広く利用されている.CDの消化性に関する知見はいくつかの先行研究によって報告されているが,3種のCDについて腸内発酵性の観点から比較検討した例は少ない.本研究ではラットを用いてCDの盲腸内発酵性を評価することを目的とした.
【方法】5週齢のWistar系雄ラットを購入し,コントロール群,α-CD群,β-CD群,γ-CD群に分けた.各CDは,2.5% (w/w)となるように配合した.飼育期間は2週間とし,飼育期間中は糞を回収した.飼育終了後,開腹し,盲腸内容物を摘出した.盲腸内容物中の短鎖脂肪酸は,2-ニトロフェニルヒドラジンによってラベル化した後,高速液体クロマトグラフィーで定量した.また,飼育13~14日目に回収した糞を用いて,16S rRNA遺伝子V3~V4の塩基配列を標的としたアンプリコンシーケンス解析によって,菌叢解析を行った.
【結果】飼育2週間における総摂餌量は,β-CD群が他の群と比較して有意に低かった.一方,摂餌量に対する乾燥糞重量は,コントロール群と比較してβ-CD群で高い値を示した.また,α-CD群,β-CD群における盲腸内容物の湿重量は,コントロール群及びγ-CD群と比較して有意に高かった.盲腸内容物中の有機酸量では,α-CD群,β-CD群においてコハク酸と乳酸の顕著な増加が認められた.また,α-CD群,β-CD群の菌叢は類似しており,コントロール群と比較して,Coriobacteriales目の増加が顕著であった.
【結論】α-CD及びβ-CDは腸内細菌叢を変化させるとともに,腸内発酵性に影響を及ぼすことが示唆された.