主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第71回大会
回次: 71
開催地: 名城大学
開催日: 2024/08/29 - 2024/08/31
p. 424-
【目的】蒲鉾や竹輪などの水産練り製品では魚肉すり身が主原料として,また液卵白が戻り抑制のため副原料として使用されている.一方,乾燥卵白(以下,乾白)には様々なゲル物性を有する製品が存在するがそれぞれの水産練り製品への添加効果,すなわち戻り抑制効果及びゲル物性改質効果は明らかになっていない.そこで,本研究ではゲル強度の異なる乾白のすり身への添加効果について調べた.
【方法】試料は生卵白,ゲル強度の弱い乾白(以下,弱乾白),ゲル強度の強い乾白(以下,強乾白)で,乾白は7 倍量の水で戻して使用した.戻り抑制力評価のため,グチすり身をリン酸緩衝液(pH7)に分散し,サンプル液とした.アジ幽門垂の水抽出物(以下,幽門垂)をタンパク質分解酵素として各種卵白液と共にサンプル液に添加し,60℃で最長120分酵素反応させ,経時的に10 %TCA液で酵素反応を止め,遠心分離した.上清は280 nmの吸光度を測定し,沈殿は電気泳動分析に供した.卵白ゲルは,各種卵白液を80℃,40分加熱して調製し,破断試験を行った.すり身加熱ゲルは,すり身に氷水と食塩を添加し塩摺りした後,3 %の卵白液を添加し,35℃,1時間加熱後,85℃,20分加熱して調製し,破断試験を行った.
【結果】すり身に幽門垂を添加すると,「戻り」が増大した.戻り抑制効果の大きさは「液卵白>弱乾白>強乾白」の順であった.電気泳動分析より,幽門垂添加によりミオシン重鎖とアクチンの分解が確認されたが,各種卵白の添加によりその分解を抑制したことが確認された.各種卵白ゲルの強度は「強乾白>液卵白=弱乾白」の順であった.卵白液を添加したすり身ゲルの強度は「強乾白>液卵白=弱乾白>対照」の順であった.以上より,乾白は生卵白に比べて戻り抑制効果は劣るが,ゲル物性改質効果においては優れていることが明らかとなった.