日本食品科学工学会大会講演要旨集
Online ISSN : 2759-3843
第71回 (2024)
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[2Cp] 食品分析
近赤外分光法によるアレルギー低減卵の判別
*山本 広史福岡 真実江崎 僚渡邊 天海寺田 拓実松崎 芽衣堀内 浩幸児玉 大介梅津 徹
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p. 58-

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抄録

【目的】食物アレルギーの原因物質の内、第1位の鶏卵は33%を占め、その対応や解決が社会課題である。鶏卵の主要なアレルゲンの内、オボムコイド(OVM)は、熱や消化酵素に対して非常に安定であり、生理化学的にアレルゲン性をなくすことや、除去することが困難であった。これまでに広島大学との共同研究において、ゲノム編集技術を活用してOVM遺伝子をノックアウトした鶏の作成に成功している。OVM遺伝子をノックアウトした鶏が産卵した卵(アレルギー低減卵)と野生型の同鶏種が産卵した卵(通常卵)の判別において、最終加工食品での抗原抗体反応を用いた検査(ELISA法等)に加えて、工程中での検査ができればより安全性が高まると期待される。そのため、本研究では近赤外分光法(NIR)を用いて非破壊的かつ簡便にアレルギー低減卵と通常卵の判別が可能な検査方法の構築を試みた。【方法】アレルギー低減卵および通常卵に対し、紫外可視近赤外分光光度計Handy Lambda Ⅱ NIR enh(㈱スペクトラ・コープ)を用いて、波長310-1100nmの透過計測を行った。吸光度スペクトルは、サビツキゴレイ法を用いて2次微分、25点平滑化を行なった。その後、ベースラインが安定している波長を説明変数として、部分的最小二乗判別分析(PLS-DA)法を実施した。目的変数はアレルギー低減卵を0、通常卵を1とした。得られた検量モデルはクロスバリデーションによりR2,RMSEを算出した。更に検量モデルを用いて、評価用サンプルの判別率(%)を求めた。判別率は閾値を0.5として判定した。尚、検量モデルの作成には全サンプルのうち8割を使用し、残りの2割を評価した。【結果】作成した検量モデルはR2:0.555、RMSE:0.334、判別率:96.6%であった。以上よりNIRを用いてアレルギー低減卵と通常卵の判定をする検量モデルを作成できた。

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