主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第72回大会
回次: 72
開催地: 日本大学生物資源科学部 湘南キャンパス
開催日: 2025/08/27 - 2025/08/29
【目的】ヒト皮膚線維芽細胞(HSF)は真皮層に存在し,皮膚の美容に関連するコラーゲンやヒアルロン酸などを産生する細胞である.リンゴ搾汁残渣はリンゴジュースの製造の際に生じるが,その大半は廃棄されている.リンゴ搾汁残渣には,トリテルペンなどの機能性成分が含まれており,ヒトの健康に様々な有益な効果をもたらすことが報告されているが,皮膚美容に対する効果についての研究例はない.そこで本研究では,リンゴ搾汁残渣抽出物(APE)がHSFに及ぼす影響を解析した.
【方法】HSFの細胞増殖を評価するために,HSFの培養培地にAPEを添加し,72時間培養後,Cell Counting Kit-8を添加し,450nmの吸光度を測定した.APEを添加し,24時間後にRNAを抽出し,次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析,Gene Ontology (GO)解析およびリアルタイムPCR法により,遺伝子の発現を網羅的に解析した.酵素結合免疫吸着法により,培養上清中に分泌されたI型コラーゲンやヒアルロン酸を定量した.APEをHSFに添加し30分後におけるp38MAPK,ERK,AKTなどのリン酸化をウェスタンブロッティング法により解析した.
【結果】10,20μg/mLのAPE濃度において,HSFの細胞増殖の亢進が認められた.皮膚美容に関連する遺伝子の発現に焦点を当てると,APEはHSFにおいてヒアルロン酸合成酵素であるHAS1,HAS2,およびHAS3の発現を上昇させ,ヒアルロン酸分解酵素であるHYAL1の発現を低下させることが明らかとなった.加えて,HSFが産生するI型コラーゲンは5.0,20μg/mLのAPE濃度において増加した.ヒアルロン酸は1.0,5.0,20μg/mLのAPE濃度において増加した.APEの添加はHSFにおいてp38MAPK,ERK,AKTのリン酸化を誘導した.GO解析のトップ10は,”nuclear chromosome segregation”や”mitotic nuclear division”など細胞分裂に関連するGO_Termが多かった.以上より,APEはHSFの増殖を促し,皮膚美容に関連する因子の産生に影響を与えることが示唆された.