主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第72回大会
回次: 72
開催地: 日本大学生物資源科学部 湘南キャンパス
開催日: 2025/08/27 - 2025/08/29
【目的】本研究の目的は, セルロースナノファイバー(CNF)ゲルの添加が多加水パンの気泡構造及び食感に与える影響を解明することである. しっとりともちもちとした食感が特徴である多加水パンは,加水率が80wt%以上の生地を用いて作製される. しかし, 生地が緩く発酵時に形成された気泡が焼成時に保持されにくいため, パンの膨らみが低下するという問題がある. 本研究では, 多加水生地の粘弾性を制御するため, CNFゲルの添加に着目した. CNFゲルの添加により生地の粘弾性を向上させることで膨らみの良い多加水パンが作製可能になるはずである. また, 多加水パンの気泡構造が変化することで食感にも変化が現れると考えた.
【方法】加水率を80wt%, 120wt%とし, 水のみの多加水生地2種とゲルを添加した生地2種の計4種を作製した. サンプル名はそれぞれ80W, 120W, 80G, 120G, と記載する. サンプル名の数字は加水率を示し, W, Gはそれぞれ水(W)またはCNFゲル(G)を添加したことを示している. 製パン性の評価では, 気泡径パラメータ解析測定を行うことで気泡構造を調べた. さらに, 作製した多加水パンのTPA試験を行い, CNFゲルの添加による気泡構造の変化が多加水パンの食感に与える影響を評価した.
【結果】加水率80wt%系の80W, 80Gと, 加水率120wt%系の120W, 120Gを比較すると, 120W, 120Gは気泡面積および気泡数の増加が見られた. また, CNFゲル添加系の80G, 120Gは, 水添加系の80W, 120Wと比較して, 気泡面積の減少および気泡数の増加が見られた. TPA試験の結果について, 加水率80wt%系では80Gは80Wと比較して非常に硬い食感を示した. これは, 気泡面積の減少によりパン生地の密度が上昇した結果であると考えられる. また, 加水率120wt%系では120Gは120Wと比較して柔らかい食感を示した. これは気泡面積および気泡数の増加により気泡膜が薄くなったためであると考えられる. 以上より, CNFゲルの添加は気泡数を増加させ, 気泡構造を均一にさせることで, 食感に影響を与えることが明らかとなった.