動物遺伝育種研究
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育種改良とエピジェネティクス
(特に改良に伴うDNAメチル化パターンの変化とその関わりについて)
須田 義人
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2005 年 33 巻 Supplement 号 p. 1-9

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抄録
家畜において、ある形質を一定の方向へ長期に選抜を進めると、それによる選抜反応がみられる。特に量的形質は、多くの遺伝子の発現制御が相互に作用し合った結果と捉えることができる。このような遺伝子群の関わり方は偶然性の高いものなのだろうか。近年、哺乳類で約75%の発現制御には各プロモーターCpG領域のシトシンのメチル化が関与しているとされ、一部の遺伝子ではこの化学修飾パターンは次世代へ伝達されることも報告されている (Tilghman, 1999) 。また、塩基配列が同じ個体でも、複数の遺伝子発現を様々に制御するエピジェネティックな機構の違いにより表現型が異なることも報告されている (佐々木ら, 2004) 。この転写・翻訳を抑制するDNAメチル化というエピジェネティックな現象は、選抜の近交度上昇による繁殖能力の退化に関与していると推察され、理論的に捉えられてきた遺伝現象を分子レベルで明らかにするという点で今後の遺伝育種学にとって重要である。今回は、家畜における育種改良とエピジェネティクスの関係を考え、育種改良に関わる分子メカニズム研究の可能性を提案する。
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