本論では,現代のCSRの議論に何が欠けているのかを明らかにするために,CSRにおける責任概念,ドラッカーのCSRの源泉,三戸公の随伴的結果論の知見を用いて,CSR実践の整理を試みる。ここで,本論におけるCSR実践とは,実際に企業が行っている「CSR活動」,「取り組み」,「広報活動」や,新聞等で報道されている「CSR特集記事」等,現実に営まれているCSR活動全般を指す。CSR実践の整理を行った結果,現代のCSRには,「役割責任概念の偏重」が認められ,「各企業が自らの事業から生じる負の随伴的結果を,どのように把握し対応しているか」という点と,「過去の結果責任に対する継続的な対応」の考察が,欠けていることを指摘した。社会が重きを置いていない結果責任を,一部の企業努力に頼り任せるだけでは,過去の不祥事や事故から得られた多くの教訓を風化させてしまう懸念が生じる。
CSRは,役割責任と結果責任の二つの責任概念を対で考えていくことが重要である。