本論文は,資本に制約があり,海外進出が大きなリスクになりかねない中小企業が進出に成功している事例を,マレーシアに製造拠点のある中小企業6社へのインタビュー調査を通して分析・考察した。中小製造業におけるものづくりのグローバル化を技術的な側面に着目するのではなく,日本的なものづくりの仕組みも組織力発揮の一要素として検討しているところに特徴がある。
対象の6社は,マレーシアでの生産において品質を維持するために,日本のものづくりの仕組みの移転をはかっていたが,それを実現するために,日本本社とは異なる組織的対応を試みていた。具体的には,異なる文化的背景や働き方に関する考え方の相違があることを認識し,現地に合わせた雇用や教育訓練,報酬システムの確立やキャリアパスの明確化を実施していた。とりわけ,限られた事例からであるが,進出年数が長く,現地で育てたベテラン従業員が比較的多く,信頼して任せられる現地従業員のマネジャーのいる企業ほど,組織力を発揮できていた。