日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
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移行期乳牛の血液に認められるストレス反応と負のエネルギーバランス
寺尾 裕美藤田 正範豊後 貴嗣
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2008 年 44 巻 3 号 p. 208-214

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抄録

乳牛は、分娩後に劇的な代謝変化を経験することが知られている。本研究では、移行期乳牛の分娩によるストレス反応とエネルギー状態とを分離し検出することを目的とし、血漿コルチゾル、グルコース、ノルアドレナリン(NA)および遊離脂肪酸(FFA)濃度の変動を調査した。採血は、分娩14日前、分娩当日、そして分娩5、10、20および30日後に尾動脈より行った。血漿コルチゾル濃度はHPLC-UV法、血漿NA濃度はHPLC-ECD法を用いて測定した。分娩当日の血漿コルチゾルおよびグルコース濃度は他の調査日と比較して有意に高い値を示した。血漿NAおよびFFA濃度も同様に分娩当日に高い値であったが、その後分娩10日後まで高い水準であった。コルチゾルおよびグルコース濃度の散布図において、分娩当日の分布が他の調査日のものと異なることが認められた。一方、NAとFFAの散布図では、分娩当日のものに加え、分娩5および10日後の分布が他の調査日のそれと異なることが認められた。分娩当日の分布の違いは、分娩によるストレス反応であり、分娩5および10日後の違いは、乳生産のためのエネルギー不足によるものと考えられた。以上のように血液性状の変化から、移行期乳牛における分娩のストレス反応と、それに続く負のエネルギーバランスという一連の代謝変化を明確に区分することができた。

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© 2008 日本家畜管理学会・応用動物行動学会
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