抄録
自然哺乳と分娩後直ぐに母親と分離し人工哺乳している2つの異なる飼養形態の褐毛和種子ウシと黒毛和種子ウシそれぞれ6頭の直腸便から乳酸菌を分離した。褐毛和種より分離した乳酸菌株28株及び黒毛和種から分離した16株は、生化学的性状及び16S rDNAの5'端末から500bp部分の塩基配列と国際塩基配列データーベースの乳酸菌塩基配列の相同性比較結果から乳酸菌種を推定した。その結果、自然哺乳子ウシはLactobacillus属5種類(Lactobacillus fermentum、L. reuteri、L. salivarius、L. saerimneri、L. amylovorus) Pediococcus属2種類(Pediococcus acidilactici、P. pentocaseus)が推定された。人工哺乳子ウシはLactobacillus属4種類(L. salivarius、L. mucosae、L. reuteri、L. oris)が推定された。また、Lactobacillus属のL fermentum、L. saerimneri、L. amylovorusとPediococcus属のPediococcus acidilactici、P. pentosaceus、は自然哺乳子ウシのみに分離され、その伝達には接触機会が多いことから給与飼料や母畜が重要な要因である可能性が考えられた。また、睦らが分離したL amylovorus IMC-1株が抗菌性を有している報告及び自然哺乳子ウシ群より分離されたr-8株,(L. amylovorus kumamoto株(=JCM14931))の培養上清が、有意に黄色ブドウ球菌、大腸菌株の増殖を抑えた(P<0.01)結果から、r-8株,は、子ウシ腸管内で抗菌性を有する乳酸菌種の1つであり、子ウシの損耗防止のため利用可能な菌種である可能性が示唆された。