1993 年 11 巻 4 号 p. 224-228
金属を全く用いずに、生体親和性に優れたセラミックスだけで製作したクラウンは、天然歯に近い色調や光の透過性が得られる補綴物として大きな注目を集めている。このようなセラミッククラウンを用いる場合、従来は主に強度の点から支台歯の全周を1.0~1.5mmの幅でショルダー形成し多くの歯質削除を行うことが一般的であった。ところが、生活歯にセラミッククラウンを応用する際には、歯髄保護の点からも歯質削除を減らして処置を行うことが望まれていた。そこで、今回は3次元有限要素法を用いてセラミッククラウンの応力解析を行い、歯質削除量の低減の可能性を検討した。その結果、セラミッククラウンの唇舌面の厚さが0.75mm以上あれば、比較的安全にクラウンを用いることができること、さらに支台歯表面にエナメル質が残存すれば、支台歯の剛性を高めてクラウンに生じる応力を減少させることが明らかとなった。