1998 年 16 巻 1 号 p. 18-23
接着性材料を活用することで歯髄を保存する可能性が大きく広がった。直接覆髄は接着性材料を活用する臨床医にとって身近で大きな関心事となっている。しかしながら、覆髄処置の臨床成績にばらつきが見られるのは、術前の歯髄の状態が覆髄に適さない症例や、施術が困難で処置が確実に行えなかった症例などが含まれているためであろう。直接覆髄の臨床成績をよくするためには、待機的な処置も含めながら、深在齲蝕罹患歯の術前ならびに術中の歯髄診断と適応症例を明確にする必要がある。露髄部に感染歯質の残置が無く、歯髄に対する機械的侵襲が少ない状態で露髄した場合で、止血や辺縁封鎖を確実に確保できるのであれば、露髄面に接する材料が水酸化カルシウムセメントであろうが接着性レジンであろうが、材料が確実に硬化する限り、その成績には大きな差異は見られないであろう。