接着歯学
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樹脂含浸層形成に関わるコラーゲンへのモノマー浸透と高次構造安定性
根津 尚史永留 初實寺田 善博
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2003 年 21 巻 2 号 p. 82-90

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抄録

樹脂含浸層形成の初期段階のコラーゲン-レジンモノマー相互作用を調べることを目的として, 水溶性1型コラーゲンおよびその脱架橋体であるゼラチンとHEMAの相互作用を, ゲル炉過クロマトグラフィーと熱分析等によって調べた.その結果, コラーゲンにHEMAが作用する過程で線維状コラーゲンの凝集状態が緩和されるとともに, 変性温度に反映されるコラーゲン固有の三重らせん構造の安定性が低下することが明らかになった.これはコラーゲンの規則高次構造を安定化している水素結合が, コラーゲンとHEMAの水素結合に置き換わることによると解釈され, HEMAのコラーゲンへの結合または浸透が示唆される.一方, 30wt%を超えるHEMAはコラーゲンからの脱水を惹き起こし, 変性温度を上昇させた.この状態ではコラーゲン線維が収縮しており, HEMAの透過性が低下していると思われる.歯科接着で用いられるHEMAの濃度が30wt%付近に設定されており, 実際その前後に比べて良好な接着強度が得られている背景として, ここで最も効率のよいコラーゲン-HEMA相互作用の条件が整っていることが考えられる.

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© 日本接着歯学会
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