接着歯学
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21 巻, 2 号
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  • 緒方 美和子, Patricia NR PEREIRA, 原田 直子, 中島 正俊, 田上 順次
    2003 年 21 巻 2 号 p. 55-61
    発行日: 2003/08/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    本研究では, 近年開発されたフロアブルレジンを用いてくさび状欠損窩洞を修復し, 窩洞の歯頂側・歯頸側両窩壁に対する接着強さの測定を行い, 従来の充填用ハイブリッド型レジンで修復した場合と比較した.18本のヒト抜去第3大臼歯の頬側歯頸部にくさび状欠損窩洞を形成し, Clearm Mega Bond (MB) またはOne-up Bond F (OB) を用いて製造者指示通り接着操作を行った.その後, Hybrid群はPa1fique Estelite, Flowable群はPalnque Estelite LV High Flowを充填した.室温水中24時間保管後, 象牙質接合界面の断面積が1mm2 (0.7×1.4mm) の微小引張り試験用試片を作製し, 窩洞の歯頂側壁および歯頸側壁における微小引張り接着強さを測定した.結果は, one-way ANOVA, three-way ANOVAおよびFisher's PLSD test (P<0.05) にて統計処理を行った.MB, OB両接着システムとも, 歯頂側壁・歯頸側壁の各窩壁において, Flowable群はHybrid群より高い歯質接着強さを示し, MBの歯頸側壁を除き, 統計学的有意差が認められた.本実験で用いられたフロアブルレジンはくさび状欠損窩洞修復に用いた際, ハイブリッド型レジンと比較して歯質接着強さを向上させることが示唆された.
  • 小石 良和, 柳田 廣明, 田上 直美, 松村 英雄, 熱田 充, 中村 光夫
    2003 年 21 巻 2 号 p. 62-67
    発行日: 2003/08/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    装着用レジン強化型グラスアイオノマーセメントと金銀パラジウム合金の接着強さを評価した. 1種は機能性モノマーとして6-メタクリロイルオキシヘキシル2-チオウラシル-5-カルボキシレート (MTU-6) を含む材料 (イオノタイトF) であり, 残りの5種は在来品 (クシーノセムプラス, ビトレマールーティングセメントファストセット, フジリュート, フジリュートBC, フジルーティングS) である. 金属試料を50μmのアルミナでサンドブラスト処理を行った後に6種の装着材料で接着し, 熱サイクル0回および20,000回後にせん断試, 験を行った. いずれの材料も熱サイクル後は有意に接着強さが低下した (p<0.05). イオノタイトは熱サイクル前後ともに6種の材料中で最も高い接着強さを示した (50.4, 14.3MPa). また, この材料は熱サイクル後において, 熱サイクル前のフジリュート, フジリュートBCと同等の接着強さを示した.
  • 池田 正臣, 二階堂 徹, 田上 順次
    2003 年 21 巻 2 号 p. 68-73
    発行日: 2003/08/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    接着性レジンの開発, 改良により象牙質に対する高い接着性が得られるようになった. 本研究では, 接着機構の異なる3種類のボンディングシステムについて術者の経験が牛歯象牙質に対する接着強さに及ぼす影響を検討した. #600の耐水研磨紙を用いて研削した牛歯象牙質に対して3種類のボンディングシステム (2ステップセルフエッチング, ウエット, オールインワン) を用いて接着した. 試料は水中1日浸漬後, クロスヘッドスピード2.0mm/minにて引張り試験を行った. その結果, 接着試験の経験のあるインストラクター群, 接着試験の経験のない新大学院生群とも, クリアフィルメガボンドの接着強さが有意に高かった (p<0.05). また, 新大学院生群とインストラクター群における各ボンディングシステムの接着強さを比較すると, クリアフィルメガボンドにおいては両群の間に有意な差はなかった (p>0.05). 一方, シングルボンド, AQボンドの接着についてはインストラクター群が新大学院生群に比べて有意に高い接着強さを示した (p<0.05). 以上より, ボンディングシステムの接着性能に違いが認められ, 材料によっては術者の経験の差がその接着性能に影響を及ぼすことがわかった.
  • 緒方 美和子, 高田 恒彦, 原田 直子, 中島 正俊, 田上 順次
    2003 年 21 巻 2 号 p. 74-81
    発行日: 2003/08/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    本研究では, 松風社により新たに開発されたフッ素徐放性ワンステップボンド, Fluoro Bond Shake-One (FB) の接着操作直後および24時間後の微小勢断接着強さを測定し, その歯質接着性能についてReactmer Bond (RB, 松風) と比較検討した.牛下顎前歯歯冠部唇面から12×6×2mmのエナメル質板・象牙質板を各8枚ずつ切出し, #600耐水研磨紙にて仕上げた後, FBおよびRBを製造者指示に従って用い, Shimadaらの方法によりBeautifil (松風) を接着させて, 接着15分後および24時間後の微小勇断接着強さを測定した (n=10).またFB・RBによる人歯エナメル質・象牙質処理面およびFBのエナメル質・象牙質接合界面のSEM観察も行った.エナメル質, 象牙質とも15分後, 24時間後両群でFBのほうがRBより有意に高い接着強さを示した.FBの象牙質接着強さは15分後と24時間後ではほぼ同等であった.またFBは15分後に, エナメル質ではRBの24時間後とほぼ同等, 象牙質ではRBの24時間後より有意に高い接着強さを示した.FBはRBより接着強さが向上し, 優れた接着性能をもつ材料であると考えられる.
  • 根津 尚史, 永留 初實, 寺田 善博
    2003 年 21 巻 2 号 p. 82-90
    発行日: 2003/08/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    樹脂含浸層形成の初期段階のコラーゲン-レジンモノマー相互作用を調べることを目的として, 水溶性1型コラーゲンおよびその脱架橋体であるゼラチンとHEMAの相互作用を, ゲル炉過クロマトグラフィーと熱分析等によって調べた.その結果, コラーゲンにHEMAが作用する過程で線維状コラーゲンの凝集状態が緩和されるとともに, 変性温度に反映されるコラーゲン固有の三重らせん構造の安定性が低下することが明らかになった.これはコラーゲンの規則高次構造を安定化している水素結合が, コラーゲンとHEMAの水素結合に置き換わることによると解釈され, HEMAのコラーゲンへの結合または浸透が示唆される.一方, 30wt%を超えるHEMAはコラーゲンからの脱水を惹き起こし, 変性温度を上昇させた.この状態ではコラーゲン線維が収縮しており, HEMAの透過性が低下していると思われる.歯科接着で用いられるHEMAの濃度が30wt%付近に設定されており, 実際その前後に比べて良好な接着強度が得られている背景として, ここで最も効率のよいコラーゲン-HEMA相互作用の条件が整っていることが考えられる.
  • 志村 玲奈, 二階堂 徹, 田上 順次
    2003 年 21 巻 2 号 p. 91-98
    発行日: 2003/08/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    本報では, デュアルキュア型レジンセメントであるパナビアフルオロセメント (クラレメディカル) について, 重合条件, 保管環境および保管期間がマトリックスレジン部の微小硬度に与える影響について調べた.試料の重合条件として, 光照射を行うものと行わないもの, 保管環境は大気, 蒸留水, およびpH4.5の人工脱灰溶液の3環境下, 保管期間は1日および1週間とした.超微小押し込み硬さ試験機 (ENT-1100, エリオニクス) を用いて各試料のレジンマトリックス部の微小硬度を試験荷重5gfにて測定した.各群の値を統計学的に分析したところ, 重合条件はレジンセメントのマトリックスレジン部の微小硬度に影響を及ぼすことがわかった.一方, 大気, 蒸留水, pH4.5の人工脱灰溶液の各保管環境, および1日・1週間の各保管期間は微小硬度に影響しなかった.
  • 二階堂 徹, 中沖 靖子, 緒方 美和子, 田上 順次
    2003 年 21 巻 2 号 p. 99-105
    発行日: 2003/08/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    新規シングルステップボンディングシステム (RZII, サンメディカル) のレジンコーティング材としての機能を評価した.ヒト大臼歯象牙質面を研削 (#600sic) し, Rzllを1回または2回塗布してコーティングした.水中1日浸漬後, レジンセメント (ケミエースII, サンメディカル) を用いてコンポジットレジン硬化体を接着した.コントロールとしてレジンセメントをコーティングせずに接着した.試料は水中1日浸漬後, クロスヘッドスピード1.0 mm/minにて微小引張り接着強さを測定した.また, レジンコーティング後の接着界面をSEM観察した.コーティング群の接着強さは約25MPaを示し, コーティングなしに比べて有意に向上した (p<0.05). SEM観察の結果, コーティングの厚さは非常に薄く (5~6μm), 樹脂含浸層の厚さは1μm以下であった.以上よりRZIIは, 支台歯の形成面を崩すことなくコーティングを行うのに適した材料である.
  • 増田 美樹子, 桜田 俊彦, 五十嵐 郁, 若見 昌信, 渡辺 官, 早川 徹, 會田 雅啓
    2003 年 21 巻 2 号 p. 106-117
    発行日: 2003/08/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    本研究は, 牛歯象牙質に対して熱処理を行い, 象牙質と接着性レジンセメントの接着性にどのように影響を与えるかについて検討した.冷凍保管牛歯に対し, 40℃と60℃とのサーマルサイクル10,000回および100℃10時間熱処理を行い, スーパーボンドC&B (サンメディカル) との圧縮せん断接着強さを測定した.また, 熱処理象牙質の研磨面, 表面処理剤グリーンによる前処理面, スーパーボンドを接着させた場合に形成されるレジンタグを走査電子顕微鏡によって観察し, あわせてヌープ硬さの測定を行った.その結果, 熱処理を行うことによって, スーパーボンドとの圧縮せん断接着強さは低下し, また, スミヤー層除去の効果の減少, ヌープ硬さの低下が認められ, 熱処理による象牙質コラーゲンの変化の影響が示唆された.
  • 各種象牙質面処理による接着強さとSEM観察について
    坪田 有史, 深川 菜穂, 大祢 貴俊, 橋本 興, 西村 康, 福島 俊士
    2003 年 21 巻 2 号 p. 118-128
    発行日: 2003/08/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    間接法レジン支台築造の有効性を検討する目的で, ヒト象牙質に対して各種象牙質面処理, また2種類の接着材を使用して, 試料製作24時間後とサーマルサイクル試験5,000回後のせん断接着強さを測定し, 比較検討した.また, 各種象牙質面処理後, および接着界面の走査型電子顕微鏡による観察を行った.
    その結果, 間接法レジン支台築造のせん断接着強さは直接法に比較して, 同程度あるいは有意に高い値を示す象牙質面処理の条件があった.また, サーマルサイクル試験後ではすべての条件が同等であった.一方, 走査型電子顕微鏡による観察では, 象牙質面の性状の変化, あるいは接着界面に差異が認められ, 接着機構が異なることが確認できた.
  • 山本 隆司, 荒田 正三, 大槻 晴夏, 渡辺 昭彦, 中林 宣男
    2003 年 21 巻 2 号 p. 129-139
    発行日: 2003/08/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    セルフエッチングシステムの樹脂含浸層の厚みや性質を詳細に調べるために, 接着界面近傍の観察を走査電子顕微鏡 (SEM) と透過型電子顕微鏡 (TEM) を用いて行った.
    未処理ならびに化学処理を観察試料片に施すことで, SEMならびにTEM観察が容易になった.ボンディング材や樹脂含浸層の厚さが1μm以下になると, SEMでは厚みの計測やその内部の構造についての観察が困難であった.一方, TEMでは, セルフエッチングされた象牙質の厚みならびにレジンが拡散した深さを容易に推測することができ, 樹脂含浸層の観察を有効に行うことができた.さらに, セルフエッチングボンディング材を塗布したままで放置すると脱灰されたスミヤー残渣がセルフエッチングボンディング材に取り込まれ, 接着に悪い影響をもたらすことがわかった.
    今回の検討結果より, セルフエッチングボンディング材を適用した際にはエアブローを行って, 浮き上がったスミヤー層を吹き飛ばして除去すべきであると判断した.
  • 森上 誠, 杉崎 順平, 片平 信弘, 山田 敏元
    2003 年 21 巻 2 号 p. 140-149
    発行日: 2003/08/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    この度, サンメディカル社より, 従来のAQ Bondに改良を加えて, ボンドの2回塗布が不要で, ハロゲン系・キセノン系・LED系の各種の可視光線照射器が使用可能となったAQ Bond Plusが開発された.本研究では, ヒト新鮮抜去歯を用いてAQ Bond Plusとエナメル質, 健全象牙質およびう蝕除去後の象牙質との接合界面について, アルゴンイオンエッチング後のFE-SEM観察を行った.その結果, AQ Bond Plusとエナメル質, 健全象牙質およびう蝕除去後の象牙質との接合界面は, いずれも緊密な接合状態を示したが, 象牙質との接合界面において従来のSEM像で確認されたような樹脂含浸層は認められなかった.以上より, 樹脂含浸象牙質, すなわち従来のHybrid層がレジンの象牙質接着にとってはたして必須の要件であるか否かについて疑問が呈された.
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