接着歯学
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炭酸ガスレーザーとエアブレイジョンを使った接着修復の術式とその考え方
荒川 義浩
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2006 年 24 巻 1 号 p. 39-42

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抄録
隣接面う蝕の治療に接着修復を選択し, 隣接面部窩洞のマージンが歯肉縁下になった場合, 第一に考えなければならないのは, マージン部の歯質とレジンとの接着がうまくいくかどうかである.なぜなら, 歯肉縁下にある歯面は, 歯肉溝からの滲出液や血液などで汚染されやすく, 接着操作中のテクニカルエラーがその部に微少漏洩を発生させる原因になるからである.漏洩が生ずれば, 冷水痛などの術後症状が即座に出現し, これが長期的な予後不良につながる.そこで, 今回は, これを解決するために著者が行ってきた臨床技法とその考え方を紹介する.本法においては, 隣接面マージン部の歯肉に炭酸ガスレーザーを照射し, 滲出液や血液による汚染を防止してから接着修復を行う.う蝕除去では, 1) 従来の機械的切削, 2) エアブレイジョンによる切削, 3) 炭酸ガスレーザー処理, これら3つを組み合わせ最小限の歯質切削を目指している.このアプローチの意義は, ミニマルインターベンションの理念と合致するのみにとどまらない.従来なら, 抵抗形態の必要性から除去されるべきマージン部の遊離エナメル質を保存することができ, これによって接着修復はより確実なものとなる.遊離エナメル質は, まずリン酸エッチングし, その後, 炭酸ガスレーザーをミラーで反射させてエナメル質に照射し (炭酸ガスレーザーミラーテクニック), エナメル質を確実に乾燥させる.次いで, 乾燥させたエナメル質にボンディング材を塗布し, フロアブルレジンを接着させる.遊離エナメルを保存し補強するこの方法を, レインフォースドフリーエナメル法 (Reinforced free-enamel method) と称する.この方法によって, 歯肉縁下のマージン部遊離エナメル質には, 象牙質接着に優るとも劣らない強固な接着と良好な長期予後が期待できる.
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