抄録
高じん性の熱可塑性樹脂,アイオノマーをインターリーフした炭素繊維/エポキシ積層板について,モードⅡ層間破壊じん性に及ぼすアイオノマー挿入およびその厚さの効果について調べた。 挿入したアイオノマーフィルムの厚さは,25.100および200μmとした。 端面切欠き曲げ試験片を用いてモードⅡ破壊じん性試験を行った結果から,破壊機構について検討し,これまで明らかになっているモードIの結果と比較した。 アイオノマーを挿入することより,モードⅡ破壊じん性値は大幅に上昇した。 アイオノマー厚さの増加とともに破壊じん性値は線形的に上昇し,アイオノマー層の有無が主に破壊じん性に寄与するモードIとは異なることが明らかとなった。 微視観察から,すべてのアイオノマー厚 さの試験片について,き裂が高じん化された層内を伝ぱすること,アイオノマーの塑性変形が顕著に生じることがわかった。 さらに,アイオノマーの塑性変形が試験片厚さ方向全域にわたって生じることが明らかとなり,破壊じん性の厚さ依存性が塑性変形域の大きさと関連づけて説明することができた。