抄録
ポリブチレンサクシネート・CO・アジペート (polybutylene succinate-co-adipate, PBSA) エマルションの接着剤適性を主として濡れ特性および皮膜形成から検討し,次の結果をえた。1.PBSAエマルション,同エマルションの乾燥皮膜(エマルション皮膜),同エマルション塗工紙,および同エマルションを含む顔料コート紙などの生分解は標準として用いた微結晶セルローズおよびPBSAそのものと同程度に速やかに進行した。2.PBSAエマルションはバクテリア,かび胞子など微生物の作用を受け易く,防腐剤添加量の増加が必要であった。3.PBSAの濡れ特性を知るため表面自由エネルギーγs,その凝集力成分γsd,およびその極性力成分γspを水ならびにヨウ化メチレンの接触角から算出し,PVAcの値と比較した。結果はPBSAに対してはγs=5l.8,γsd=33.2,γsp=18.6となり,PVAcに対してはγs=51.7,γsd=35.2,γsp=16.5,(但し単位はmN/m)となった。従ってPBSAエマルションはPVAcエマルションと同様な接着剤適性を有すると表面化学的視点から期待される。4.110℃(融点91~95℃)で成膜したPBSAエマルション皮膜はもろかった。これは少なくとも二つの原因により粒子融着が限定的になっているためと考えられる。一つは粒子間隙に保護コロイドPVAの薄く広がった層の存在することであり,今ひとつはPBSAの溶融粘度が1kPa/11℃と高いことである。それ故に加熱と加圧の同時適用は粒子融着促進に有効で皮膜は強靭化された。5.同じくPVAを保護コロイドとするPVAcエマルションの50℃(MFT=15℃)形成皮膜ももろかった。皮膜はPBSAエマルション皮膜と違った構造で,粒子は直接には相互融着せずPVAを介して結合する石垣柵造が形成されていた。ここでPVAは粒子を強固に結合していると考えられる。この皮膜に対する加熱,加圧の同時適用は石垣構造を破壊し反面粒子融着を促進したが皮膜はむしろ弱くなった。この結果はPVAc粒子の非結晶性から肯かれる。6.PVAcエマルションでは可能な室温成膜,これができない点は不利だが,PBSAエマルションはブロッキング抵抗性,耐水性,耐溶剤性,光沢面形成などで有利であり,従来ない生分解性接着剤としての適性を備えていると期待される。織布接着,顔料接着,紙のヒートシールでは従来市場品エマルションより優れていることを応用例として示した。