日本接着学会誌
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研究論文
木質バイオマスを主原料とするエポキシ樹脂の合成と硬化樹脂の力学特性
岸 肇藤田 晶宮崎 光松田 聡村上 惇
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2005 年 41 巻 9 号 p. 344-352

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抄録

木材とフェノール類との加溶媒分解反応により得られる木材液化物を前駆体とし,フェノール性水酸基をグリシジルエーテル化する反応経路により,木質バイオマスを主原料とする液状エポキシ系樹脂を合成した。反応溶媒にフェノールを用いた液化木材を前駆体として合成した木材エポキシ樹脂からは,充分な架橋構造を有する樹脂硬化物を得ることはできなかった。一方,フェノール性水酸基を2個有するレゾルシノールとの反応で得た液化木材を前駆体に合成した木材エポキシ樹脂からは,市販ビスフェノールA型エポキシ樹脂と同等以上の室温曲げ弾性率 (3.2GPa),曲げ強度 (150~180MPa)を発現する高強度硬化樹脂を得ることができた。液化木材中の水酸基含有量は原料組成が同一の場合でも液化条件(温度・時間)により変化する。液化木材中のフェノール性水酸基の確保は,それを前駆体に合成される木材エポキシ樹脂のエポキシ基含有量を支配し,結果としての樹脂硬化物の架橋密度や力学特性を決定する重要因子であることがわかった。

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© 2005 一般社団法人 日本接着学会
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