日本接着学会誌
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論文
歯科接着性モノマーと象牙質の接着処理時間中の相互作用変化に関する時間解析分光学的および微細形態学的研究
池村 邦夫Franklin R. TAY廣中 俊也根來 紀行David H. PASHLEY遠藤 剛石田 初男
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2007 年 43 巻 10 号 p. 373-386

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抄録

歯科接着性モノマーと象牙質の接着処理時間中の相互作用変化は知られていない。本研究は接着性モノマーを含む歯科セルフエッチング接着剤と象牙質の処理時間中のin situ相互作用変化を時間解析FTIR-ATRおよび透過電子顕微鏡(TEM)により調べた。4-アクリロキシエチルトリメリット酸(4-AET)およびそのカルシウム塩(4-AETCa)を純度よく合成した。4-AET液[4-AET/2-HEMA,40/60wt%]をハイドロキシアパタイト露出象牙質に塗布し,時間解析FTIR-ATRを15分間測定した。4-AETを含むワンステップ接着剤を入歯象牙質の割断面に塗布し,1/3,5,10および20分暗所に放置した後,可視光線を照射して試料を作成し,その接着界面の微細構造的変化をTEM観察した。FTIR-ATRの差スペクトルより,1583cm-1と1411cm-1にCa-カルボキシレートのνC=Oが認められ,合成した4-AETCaと一致したため,4-AETCaの形成が確認された。4-AETCaは15分間の接触時間とともに増大した。TEM観察により象牙質との接着界面に不溶性のインターラクション層が認められ,その層の厚さは時間と共に増大(0~2500nm)した。これらの知見は,配位子モノマーとして作用する4-AETと象牙質アパタイト間の接触時間に伴い4-AETCa塩の形成が増大するという仮説を支持している。

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© 2007 一般社団法人 日本接着学会
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