抄録
一液性エポキシ樹脂は,一般的に,室温で液状エポキシモノマー,室温で不溶解性の固形硬化剤,および充填材としてのフィラーなどから構成され,加熱により,固形硬化剤が溶解して液状エポキシモノマーと化学反応することで,硬化反応が進行する。一液性エポキシ樹脂の課題として,エポキシモノマーと硬化剤とが予め混合されているために,保存安定性がある。なぜなら,常温で放置した場合でも,エポキシモノマーと硬化剤の界面付近で徐々に反応が進み,粘度が増加するためである。特に硬化剤として連鎖移動型硬化剤であるイミダゾールや第3級アミンを用いると,保存安定性が急激に低下することが知られている。しかし,現状これらの硬化剤の構造とライフとの関係,およびメカニズムは未だ明確になっていない。今回,固体硬化剤である長鎖アルキルイミダゾール誘導体が形成する自己組織化構造をX線回折とFTIRにより明らかにした。その自己組織構造が鋭敏に一液性エポキシ樹脂の貯蔵安定性に影響を与えることを見出した。