抄録
イオウあるいはパーオキサイドによって架橋した天然ゴム(NR)の高次椛造,およびカーボンブラック(CB)の充てんによる構造変化をパルス法 NMR によって評価した。プロトンのスピン-スピン緩和の減衰曲線 M(t) を,ガウス型の減衰の重ね合わせとみなし,計算プログラムによって緩和スペクトルを求め,構造を解析した。重水素化トルエンによって膨潤させた試料のパルスNMR測定を行うことで,構造の差を明瞭にとらえることができた。パーオキサイド架橋したNRは,イオウによって架橋したNRに比べて分子運動が活発な欠陥成分が多いため,引張強度が低くなると推測された。CB充てんによる力学物性の向上は,パーオキサイド架橋系で顕著に見られた。CB充てんによるパーオキサイド架橋 NR の緩和スペクトルの変化は,欠陥成分の減少として現れた。CB充てんによってスペクトルの形状はイオウ架橋NRに近づ〈ことが明らかとなった.