2016 年 52 巻 10 号 p. 293-299
添加するタッキファイヤ(TF)の種類や量が,ウレタン系軟質ポリマー(PU)および多層カーボンナノチューブ(MWCNT)からなるコンポジットの相構造や導電性に及ぼす影響を検討した。PUと相溶性が低いタイプのTFを添加した場合,海島型相分離を示した。この系では,TF量が少ない時,海相であるPUリッチ相中でMWCNTの分散性が悪かった。そのため導電ネットワークを形成し難く導電性は低かった。TF量を増やしMWCNTと親和性のあるTF相が海相になると,MWCNTの分散性が向上し導電性も増加した。一方,PUと相溶するタイプのTFを用いた場合,マトリックスであるPU/TFは単一相を形成し,TF含有量に依存せずMWCNTは比較的均一に分散し,導電性もおおよそ一定値を示した。以上よりマトリックスの相構造やMWCNTの分散性,ならびにコンポジットの導電性は,TFの種類とその添加量に大きく影響されることがわかった。