2018 年 54 巻 1 号 p. 28-34
体内で使用される接着剤は「生体用接着剤」と呼ばれ,その主なものは大きく2 種類に分類される。その一つは骨や人工関節の接合や固定のほか,広く歯科用接着剤として使用される「硬組織用接着剤」であり,もう一つは血管や神経などの軟組織に使用される「軟組織用接着剤」である。「硬組織用接着剤」の主成分は液状のアクリル系モノマーと粉末状のアクリルポリマーの混合物で,骨の内部の間隙への含侵,進入させることにより接合機能を発揮する。後者は血管や皮膚などの軟組織の接着を対象とする「軟組織用接着剤」である。「軟組織用接着剤」の主成分はシアノアクリレート系の瞬間接着剤であり,最近ではマイクロサージェリーなどに広く使用されている。この接着剤は生体自身の接着機能が回復するまでの短期間の使用であり,生体の機能を阻害せず,体内に吸収されるものでなければならない。また,血液の止血機能を活用した接着剤に血液から抽出したフィブリン成分を活用したものがある。この接着剤は生物由来のために,生体に対して為害性がなく,安全性の面からも有望視されている。