日本接着学会誌
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総説
有機分子との相互作用をキーとするセルロースの新たな機能
柴田 徹島本 周大倉 裕道
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2018 年 54 巻 4 号 p. 150-157

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抄録

セルロースは,もっとも生産量の大きいバイオマスとしてのみならず,おそらく精緻に作られた構造に由来するであろう機能性にも注目すべきものがある。本総説では,セルロースあるいはその誘導体と,便宜上カーボンナノチューブ( CNT) も含めた有機分子との相互作用がキーとなる機能に焦点を当てる。具体的な機能としては,CNT の分散剤として高い導電性を実現したこと,キラル分離固定相( CSP) としてキラル分析手法革新に寄与したこと,そしてキラル選択的な反応が極めて高い鏡像体過剰率( ee.) に達したことである。これらの機能のいくつかにおいては,ピラノース環と芳香環π-結合系の相互作用が重要な役割を担っていると推定され,極性/ 非極性の二面性を持つことがセルロースの機能を特徴づける一要因であると考えられる。

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© 2018 一般社団法人 日本接着学会
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