日本接着学会誌
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総合論文
パルスNMR の差スペクトルを用いたタッキファイヤによる粘着性発現メカニズムの解析
岡田 駿柏原 佑亮浦濱 圭彬藤原 和子日笠 茂樹平井 智康藤井 秀司中村 吉伸
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2019 年 55 巻 6 号 p. 218-229

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抄録

粘着剤におけるタッキファイヤの効果を明らかにするために,ソフトブロックがポリアクリル酸n-ブチル(PBA) のアクリル系トリブロックコポリマーに,重量平均分子量(Mw) が異なる4 種の特殊ロジンエステル系タッキファイヤ( RE) を10~50 wt%添加した系の1Hパルス核磁気共鳴分析の差スペクトルを測定した。差スペクトルは,粘着剤の実測緩和スペクトルから,ベースポリマーとRE 単独の測定値を混合比に基づいて加算して作成した合成緩和スペクトルを差し引いたものである。差スペクトルにRE,比較的硬いPBA,比較的軟らかいPBA に基づく3 つのピークが出現した。RE はPBA に相溶した状態と凝集粒子で存在する。RE のMw や添加量にともなうこれらのピークの変化から,凝集粒子の生成の程度,凝集粒子によるPBA の分子運動の拘束の情報が得られた。得られた知見は,スチレン系ブロックコポリマーに分子構造の異なる各種タッキファイヤを添加した系の差スペクトルの解析にも適用でき,粘着特性の考察に有用であった。

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© 2019 一般社団法人 日本接着学会
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