2020 年 56 巻 4 号 p. 117-124
ポリエチレン( PE) とポリアミド( PA) を含む積層フィルムが食品包装用に用いられている。しかし,この積層フィルムの溶融混練では相溶性に乏しいブレンド物が得られてしまうために,この積層フィルムのマテリアルリサイクルは十分に検討されていない。そこで,PE/PA 多層フィルム回収物のモデルとして LLDPE/PA6 ブレンドの力学特性と相溶化材である無水マレイン酸変性ポリプロピレン( MPP) の添加効果 について検討した。LLDPE 中に分散するPA6 粒子によって弾性率は向上し,衝撃強度は低下した。引張降伏応力は大きく変化しなかった。相溶化材としてのマレイン酸変性PP( MPP) の添加は,LLDPE 中に分散するPA6 粒子を微細化し,衝撃強度を顕著に向上させた。一方,MPP の添加は,弾性率や降伏強度をあまり変化させなかった。LLDPE/PA6 ブレンドへのMPP の添加は,高い衝撃強度と高い弾性率を両立させる優れた手法であった。