2020 年 56 巻 6 号 p. 240-247
アクリル系粘着剤の主成分であるアクリル酸エステル共重合体は,数種のモノマーと組み合わせることで設計の自由度が大きく,架橋剤としての多官能イソシアナート系化合物の添加量,或いは共重合体に導入する官能基モノマー量を調整することより,粘着剤の物性( 凝集力,タック,粘着力等) を制御している。しかしながらアクリル酸エステル共重合体に導入した水酸基と,イソシアナート基を有する架橋剤との反応性は,塗布時に用いる溶媒中の水分や空気中の水分とも反応すると考えられているため,詳細な反応性を求める事が困難とされていた。ここではNMR を用いて水酸基とイソシアナート基の反応性を求めると共に,分子運動性と物性との相関性を検討した。