日本接着学会誌
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総合論文
動的な界面材料の設計と応用
宮田 隆志
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2023 年 59 巻 6 号 p. 188-195

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抄録

材料の表面・界面は内部と異なる構造や性質を示し,材料全体の物性や機能を大きく左右するため,接着分野では材料の表面や界面の制御が不可欠である。本総合論文では,動的架橋や動的規則構造などを有する高分子粒子や高分子膜,自己集合体などの界面材料について筆者らの研究の一部を紹介する。分子複合体やジスルフィド結合を動的架橋として導入した高分子粒子は,標的分子や還元環境に応答して粒径を変化させた。また,表面に光二量化基を導入した高分子粒子は,光照射によって凝集することが明らかとなった。分子インプリント法によりゲル薄膜に標的分子に対する動的結合サイトを形成させることができ,標的分子を選択的に吸着して検出できるセンサーチップを設計した。また,自由体積が大きなポリジメチルシロキサンに光二量化基を導入した光応答性フィルムは,光照射領域のみ自由体積が減少し,簡便に表面パターンを形成できることがわかった。親水性のアルギン酸と温度応答性のポリ( N-イソプロピルアクリルアミド) からなる相互侵入網目が空気中の水蒸気( 気体状態の水) を効率よく吸収し,僅かな温度上昇によって液体状態の水として吐き出すことを見出し,温度サイクルによって省エネルギー的に空気中の水を捕集することに成功した。さらに,体温付近で液晶-等方相転移する液晶高分子から高分子膜や高分子ミセルを設計し,その相転移によってモデル薬物の可逆的な放出制御が可能であることを示した。これらの動的構造を有する界面材料は,ユニークな表面・界面性質を示すため,医療・環境・エネルギー分野への応用が期待できる。

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© 2023 一般社団法人 日本接着学会
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