抄録
不安障害全般についての最近の文献を展望した。不安障害はほかの不安障害と併発しやすく,また,気分障害とも併発しやすいことを疫学研究から述べた。不安障害の成因としては遺伝学的要因より環境的要因のほうが強いことを示した。脳内機構として扁桃体の過活動と腹内側前頭前皮質の抑制不全といったアンバランスを示す病態生理について述べた。不安障害の薬物療法と認知行動療法のメタ分析結果を示した。不安障害の精神薬理学としてドパミン仮説について述べた。これに関連して臨床的には不安障害に対するセロトニン・ドパミン拮抗薬の使用量が米国では増加傾向にあることを言及した。不安障害の予後については,慢性に経過し,長期の維持療法が必要であり,うつ病が併発すると治療抵抗性であることを示した。